………さて、これが君たちのかつて歩んできた歴史、独占と排斥の到達地。
その縮図、ってなわけ。
X百年前、くらい……かな? 人類が衰退しはじめた、これが数多の要因のうちひとつ。
行き場を失った野生生物たちが、大挙して人類の生活圏に押し寄せた。
ヒトはこれを押し返すために、持てる当時の技術で対抗した。
しかし、抗生物質で滅し損なった細菌が耐性を持ち始めるように
それと同じことが彼らの生態系に起こった。
ヒトは脅威を滅し切れなかった。外からの攻撃だけでなく、内からも妨害されてね。
最初は下等生物と高を括っていた人類も、次第に勢いに押され始めて、結果大きく数を減らす事になった。
第13代【老いたる梟】。君はまだ生まれてもいない頃の話だから、知らないだろう。
きみの【先代】も、数十年前に、今回と同じ実験を試みた。
そして、今と同じ結果を見ている……
いや、今回はほんの試験。これよりももっと大きな被害だ。
生命力というのは凄まじいね。
彼もやはり、それを御することはできなかったよ。
そこで―――
求められた俺は考えた。最短で成し得る一つの方法を提案した。
彼は承認し、それを【曙光計画】と名付けた。
彼だって私欲のためにあの人柱システムを立ち上げたわけじゃない。
もともとは、人類生存圏の平定の為、周囲からの脅威を取り除く手段だった。
それは上手く作動した。それ以降、脅威もリソース不足も街から遠ざかり始めた。
……無論、荒廃区域はさらに広がった、けどね。
わかるだろう、第13代【老いたる梟】。
15年前の被験体逃亡騒ぎで街の絡繰を知り、その彼を "粛清" した君だ。
当然、これを乗り越える義務が君にはあるよ。
だいじょうぶ、君たち側人類だって、そう捨てたもんじゃないさ。
飢餓と渇望、放浪と絶望、終わりと始まりを経てきた人類は、
あの時よりも強くなっているとも。
俺は考える。君たちが乗り越えた先に在るもの。
それが【世界の終了】以外のなにか別のものであるとするなら
それは
……んー。まだ駄目だね、俺にこういうのは。
まあいいや。とにかく、君は今は休息を取るべき時だよ。
俺がここまでしないと、君はいつまでも活動しようとするんだから。
……
……もう聞こえてないか。それでもいいよ。
今はゆっくりおやすみ。
希望にしろ絶望にしろ、未来はまだここにはない、のだからね。