「他の場所で見ないのはまァ…」
「鼠取り・・・がいるからじゃねぇの？」

「ことわる」
「ただしい　はんだん　だと　おもい　ます」

「そこの　ひと　やりたい　です？」

｢ごめんよ
俺、ハイリスクな勝負は好きじゃねーから｣
勝負を断った…

『少々、プロポーズの答えのために業を減らしたくてね。』
ここにいない知り合い狂剣のことを思い出しつつ。

『手っ取り早く減らせるのがそれなんだよ。』

「うーん」
「生憎この骨牌は移動用なんだよね。」
ひらひらと一枚の骨牌を手にしている。曙光の骨牌だ。

「無駄に、蓄えちゃったから」
「戦うのは、リスクが……」
しょぱ……

『ありがとうね。』
かり。簡素にお礼を書いた。

｢プロポーズ…それに、業を減らす？
俺には理解できねー考えだな、そりゃあ｣

「もちもの　すっきり」

「ありがとう　ます」

一気に骨牌を2枚消費したので、身軽そう。

「なんでプロポーズ…？」ここで聞くような単語じゃなかったものでびっくり。

「ああ。あの」

* 昨晩のか。
* …律儀だな。

「プロポーズ」「アレかな、かっこいい言い回しって、やつかも」

「プロポーズねぇ」
「終末間際だからそういうこともあるか。」

「ぷろ　ぽーず？」

きょとん、
首を傾げる

「よくわかんない　けど」
「やくに　たったら　うれしい」

「ひゅー、熱いねぇ。」
野次を飛ばす

「愛に生きるのは素晴らしいー。」

｢恋人なんていつ裏切って何を奪われるのか分かんないってのに…ま、俺には関係ないからいいけどな｣

『さて、また骨牌作らないとな。』
もう一枚あるからやろうと思えばやれるが。

「もちもの　もう　ない」

「きょうは　ずっと　ここかも」

「プロポーズには指輪とか花とかが必要と聞くけど……」
「まぁそんなものここにはないか。」

「メトロは行きたかないなぁ。
お兄さん喧嘩クソ雑魚やねん、お守り持っていかなあかんなぁ」

「METOROでしのを殺したーいって言ってきた人もいたわね！」

ちゃぷちゃぷ

「………………」

『「私と一緒に寝ませんか？　安らかな眠りを約束してやるから」ってね。彼のことだからこれは「お前を殺して俺も死ぬ」だとは思っているが、言い方がプロポーズっぽかったからそう言っているだけだよ。』

「思ってたより」「ロマンチックだった」
「お幸せにね」

「めとろ　あした　いこうか　な」

「ねずみ　さん、きになり　ます」

「……確かに、随分とプロポーズのような言い方だね！？」
「結婚は人生の墓場だと聞く、もうそのようなモノじゃないかな？」
ちょっと面白そうにしている、他人の色恋はいつだって面白いものだ。

「ハハ！ナンパみたいなもんだね。
　俺も昨日、ある子に安らかな眠りを約束して、それをあげたさ」
「俺の場合は文字通りだったけどね」

「お相手さんはーロマンチストなんだねー。」
うんうんと頷いている

「幸せにー。」

「ぷろぽーず　ろまんちっく」
「なんぱ」

「……」
「たのしそうで　なにより？」

『でも相手は剣だぞ？』
頭に包丁を刺すジェスチャー。

｢本当に安らかに眠らせてくれんのか？
その言葉だけじゃイマイチ信用ならねーな｣

「それ言ったらおしまいでしょ」
やけに流暢。

「チッ」耳を塞ぐ。
思ってたよりも甘ったるさが多め。聞いてるとみじめになるので聞かないことにした

「……相手、刃の彼かい！？」
「……まぁ、そりゃあ、そりゃあお前も殺して俺も死ぬ、か……？」
「え、えぇ……？」
すごい困惑している、あの人ってそんなこと言うんだ。

『と、いうわけで相克誰かしないかい？』

ピッ、とだしたのは梟の骨牌。
『これしかないからこれに勝てる人がいいかもね。紙切れももちろん使わない。ないからね。』

手持ちの骨牌を眺める。少し考えて
「……」目を瞑った。これで見ざる聞かざるの姿勢。

「あーー、あのゴジュウ人分くらい賑やかな人かー。いいねぇ。殺し愛ってやつ？」
わからないけどね

「はいはーい。うちはいつでもー、相克の相手ボシューしてるよー。」

「高度な、心理戦」「ってやつかな」
「……やめとこっと」

「生憎この骨牌は移動用でね……（二回目）」
曙光の骨牌。勝てるけど使う訳にはいかない。

「一見したら絶対に勝てる戦いだけど、
　それに食いつく世間知らずは梟にゃむしろいなさそうだ」

「…………………………………………」
骨牌をしまう。

『それもそうだ。ふふ、忘れてくれ。』

「じゃ、俺は鼠小屋の方を見に行くから」
「ここ以外で会えたらお茶でもしようぜ、可愛い子ちゃんたち」

その場で仕立てた骨片。
梟ときてMETRO行きのそれは相克の為ではなく、移動用だ。

「ふくろう　に　かてるのは」

「えっと……」

「あららー。そっかそっか。うちはいつでも募集してるからねー。」

「いってらっしゃ～い。襲われないようにー気をつけてね。」

『地道に減らすしかないか。』

『今はいつでもお相手待ってるよ。』
骨牌があるからね。

「おや、行ってらっしゃい。」
「……さて、私もそろそろ曙光に石を燃やしに行こうかな。」
手の中の骨牌をひらひらしながら、刀を携えた人影は姿を消すだろう。

「ん、みんな行ってらっしゃい」
「お気をつけて、ね」

「いってらっしゃーい。」

「曙光かー。明日は曙光に行こーかな。」
るんるん、とはしゃいでいる。

「曙光」「あんまり、よく知らないや」
「楽しそうな、ところ、らしいけど」

「………………………………………………………………」
眉間にしわが寄る。

減らないし、できないし。

「得た業を捨てたがるなんて人間、神様もいるとは思ってなかったんだろな」眺めてる。こういう時は僅かばかりの元気が出る

｢そんなに減らしてえならよそ行きな｣
｢よそなら勝負好きも多いだろうし勝手に奪っていったりするし｣

「なんか」「すごい渋い顔してる」
「相克、したことないんだよね……」

「お兄さん、勝負ごと苦手やねん」

「かみさま」
「かみさま？」

聞き覚えのあるような単語。耳に引っかかった。

「たまたま　あってたので　もらい　ました」
「ありがとう　ござ　ます」

『嘘はつけない性格でね。』
かりり。

それはそれとしてちまちま減らしている。

「この塵が全部種だったらいいのに。
　……いや、それじゃあどの道芽は出ないか。」

地道に塵芥を山にして、燃やして、その繰り返し。
合間に溜息。
これはいつもその繰り返し。

「うちはーいつでも待ってるよー。」
ふふん、と言い謎のポーズ。

｢いいよな、全部種になったらどれぐらい稼げるんだろうな…｣
おそらく別の用途を考えている。

「もっと早くーたくさん種があればー、変わっていたのかなぁ？」
純粋な疑問。

「お兄さん勝手に変な事したら弟に怒られるんや…怒るとおっかないんや…」

「初相克」「勝利」
✌️ダブルピース✌️

「おぉー。おめでとう！」
拍手をする。

「おめでとう　です」

「対戦、ありがとうだよ」
✌️ダブルピース継続✌️

「神様知らない？とんだおふざけ野郎だよ」吐き捨てるように。

「種を植えて、育てて、増やして……それを繰り返す事ができていたなら、こんなゴミ漁りをする必要もなかったろうね。」

肩を竦め、不用品を片っ端から火にくべた。

「かみさま」

「うーん」

「おしえてもらった　ような」
「わすれろって　いわれた　ような」

「おー勝ったの。おめでと」

* やる気の無さそうな拍手。

「めでたい！」

「しばらくは」「いいや……」
「あんまり、戦いたくないしね」

「かみさま。うーん、知ってはいたけど。」
だって存在しないし。こんな世界になってしまったんだもの。

「次は、自然豊かってやつにしたーい！」

「かみさま、大抵ろくなやつじゃない」
「まともなやつは、珍しいよ」

「じゃあ忘れてていいんじゃないの。」
「楽だよー何も知らないのは…余計な世界を見なくて済む」

興味が無さそうに
業稼ぎに戻って行ったか…

「塵も燃やせるんだな」

「かみさま」
「もえる　ほん」
「おしえ　いのり　すくい」

「うーん　あまり　おぼえて　ない　です」

「平和が1番やな」

「居てもヒトに興味ないんじゃね」

* カラン。
* ランプの揺れる音。

「居ても居なくても変わんないと思うわ」

「そうかもーねー。」
くるくるしている。

「あんまり、かみさまの話してると」
「監視員に」「何か言われそう」
なんとなくだけど

「お兄さん襲われたら逃げる事しか出来へん…身なり良いからイイもん持ってそうってよく思われるんやろなぁ」

「燃える、ねぇ…信仰ってのが許されてなかったりしたのかな」
それだけ言うと、塵探しの作業の為に奥へ消えていった

「たしかにー、お口チャックーだねー。」

「おくち　ちゃっく」
「ぎゅっ」

* 舌打ち。

「しょっぱい言論統制する前に
　道端のゴミ拾ってくれた方が
　助かるんですけどねー…」

* 監視員のいる方をジトリと見て。

「ここもだけど、曙光の方で」「言うのもやばそうだね」

「あんまりそーゆーことするとー危ないよー。」

「うちはーゴミ拾いでー最期に、この世界への貢献でもしよー。」

「しゅーぐぁん　は　そういうはなし　ぜったい　だめって　おしえられた」

「……いったこと　ない　から、わかんない　けど……」

「そこで言うのはガチで命知らずだわ。
　流石のあーしも場所は選ぶ」

「どっちかってーとお偉方より
　敬虔な一般市民様が怖いね」

「好奇心は、猫を殺す」
「ってやつかも」「人も殺すんだね」

「はぁ…監視員うざかった……」(小声)

武装お嬢様は監視員から解放された。
ゴミ箱の蓋と木の枝はいまだに装備。

「だな」

「好奇心を抑える理性の無い
　馬鹿から死んで行くとも言う」

「こうきしん　だいじ」
「だけど」
「むぼう　だめ」

「さ〜てト」
「オシゴトしますかァ」

大層な荷物を荷台で転がすデカい男がノシノシと通りを歩いている。当然のように監視員がついているが気にしちゃ無かった。

「ァ、最初ァこの店まで卸しに行くンだけど道中に飯美味い店ナイ？」
「ェ〜。無視しなくていージャン！」

というか監視員に絡んでいる。

「好奇心は、適度に」「だね」

「…………」
埋まってしまった。

燃やせば増える。ここまで減らして？
『まるで賽の河原じゃあないかこれ。』

仕方なく燃やし、また減らす。
「…………！」
骨牌がひとつできた。