「一回グラサンは色眼鏡外してみたら」
「声無しのお嬢さんがそんな気ないの分かるんじゃないかな」

「うっせ。長寿を願ってんだ。可愛い願いごとじゃねェか」

「健康を手放すのはやだからね？
流石の僕でもそれがやばいって事位はわかる」

｢業で人の願いが叶う世の中だったら良かったなア？｣

「やりたいことをやろうにも、そのためのリソースが世界に残されていないんじゃあね。」

骨牌を火にくべて、肩を竦めた。

「少年が手放さなくても健康の方が手を離していくよ」
「ほら見てごらん、あれが君の行く末だよ。常にどこか調子悪いし痛いよ」

ドクを指さす。

「大人も遊んでたんかあ…」
「それはなんというか…おおらかな場所ですね、良いんじゃないですか」
「そっちで遊んだ方が楽しそうですし」

ここはやっぱり目が気になるだろうから

「…お？や、子供からはもともと取るつもりは、………ああ！」

察しが悪い男である。
だから少しして察した。
となりの男の助け舟が大変わかりやすくなければ危ないところだ。

「そーだな～～。
　花の代金分、なんならこの先も定期的に診療所に飾る花は欲しいし
　こっちは治療費を勉強することで継続的に協力できりゃあ嬉しいねえ！」

「寝床が決まったので寝よう」
「おやすみ世界」
「明日もギャンブルで負けたやつが絶望して一人でも多く自分で死にますように」

「うーん……三十路ってやっぱり怖い……健康の方からバイバイするのは想定外だ……」

「まぁ、流石に僕も何処でもここでも遊んだりはしないよ。
場所と時はちゃんと弁える」

「眼鏡を外すと遍く女性が私の瞳に焼かれてしまうから」

つまりこの眼鏡は視界を曇らせ都合よく世界を見るためにできている。多分。

｢さて、もう少し足で稼いで来ますかねーっとお｣

「あぁ、お願い事の最悪度が更新されてしまった……」

眠る人も居るものだ。瓦礫の上で見守りつつ。

「さっきの願いもどうかと思ったけど…」
「その願いもだいぶどうかと思う…」

引っ込んでいく人々を見送る

苦笑した。まあ、今日の話の総決算としては及第点である。

「え、んじゃ俺も頭の色眼鏡ちゃんとかけとかないとな」
「今までに灼いちまった男性女性の責任とらねえとな～」

適当言う。ナンパ男過多である。

「…っし。俺もそろそろ診療所ひっこもうかね。
　この流れだと年寄は早寝、みたいに言われそうだが、仕事があるからなんだからな！」

そう言って貰った花を片手、片手は白衣のポケットに突っ込もう…として空振りしながら
兎も角今日の処は己の根城へ撤退模様。

「おや、眠られるのですね」
「お休みなさい」

寝る度に貴方の動ける時間が減っていきます。
それはそれとして愉快なお願い事！

『自信あり、100。色眼鏡マイナス100』
書き込み。

「年寄は早寝ですからね」

敢えて年寄から言わせて頂きます。敢えて。

「寝る人はおやすみ、まぁここなら心配はないか……
軽薄二人衆はどこからその自信が湧いてくるんだ……」

「はー……じゃあ俺は曙光にまた寄らねえと……」

空振った手を見た。世話の焼けるすぎる。

「今日は色男も形無しだな。
　しっかり男磨いて出直してくるか……」

「三十路でもう早寝になる程年寄なんやな…」

兄貴も早寝になるんだろうか…

「俺は実績伴ってるからねえ」
「昨日もある人と一夜を共にしたんだ」

実績がある故に嘘はつかない主義だ。

「今めちゃくちゃ相克でゼロになった気がする。
　まあゼロってことは全然脈ありか」

「それじゃまぁ……本当にモテるのか……」

なんか釈然としないけど事実なら仕方ない。

「う、裏切り者…！」

敢えて自発的に発言することでなんかいい位置にいる三十路仲間を
信じられないものを見る顔して見る。

『まぁでも。私みたいのに好かれても困るでしょう？』
ほら、と言わんばかりに体を見せる。

『何言われるか分からないわよ。』

「休息は大事だからね。早かろうが寝れる時に寝ておくが吉だろう」

三十路であろうとなかろうと……。

「軽薄そうな男が誰しも空ぶってるわけじゃねえぜ？
　寧ろ実入りがあるから皆こぞってナンパするんだ」
「そこの兄さんについてはご愁傷様だが……」

彼も実ってないことはないだろうが、
酷い目にあってることが多いように見える。

「なんだ？今私のことだけ疑っているか？」

「こんな世界ですし、軽薄の方が後腐れなくて良いんでしょうね…」

「じゃァ、急患が出たら遠慮せず来いよ～～」

そう言い残すとえっちらおっちら
トレードマークの白衣もない長身が診療所のほうへ帰っていった。

「なるほど……また一つ勉強になった。
ナンパって成功することあるんだなぁ……まぁ、なんか襲われたりしないように気をつけてね」

『私とは遊びだったのね！』
そう書いたあとペンを包丁みたいに持ち刺すジェスチャー。

おや……軟派な者が刺されそうになってる図だ……(語弊)

「軽薄の方が良いのかなぁ……でも僕は一人の人と一生添い遂げたいな……」

この世界だと夢のまた夢だろうけど

「それに、終末を迎える前に刺されて死にたくないよね」

ジェスチャーを見ながら

「一口に三十路と申しても幅がありますからね」
「貴方のお兄上様は、どうだか」

わたくしは寝ませんけども！
まだまだ若いと言う事かなァ！　お医者様と違って！

「そうそう。一回ぐらい試すのも良いかもね、
　案外成功するかもよ。年下って可愛いし」

そして、ちらりとペンが刺さった方を見た。
ありゃあ世界が終わる前にでも火が起きるね。

「後腐れがない方がいいってのはマジでそうだろうな」
「俺はいつだって全ての人の友人であり恋人だが、
　相手する奴はもっと……根本的な慰めや、もっと別のものを求めてる」

「お兄さんが供給を担えてるなら何よりだねえ」

「いや実りある。めちゃくちゃ実ってる。旧時代でいうと秋ぐらい実ってる。
　ここ最近もかなり実ってるから。ちょっと今日は毛虫に刺されたけど。
　そしてこのままだと云われなく声無しのお嬢さんにも刺される」

「そうですね、モテるかどうかは置いといて」
「俺も正直刺されて死ぬ羽目になるような軽薄さはどうかと思います」

「実りよりも刺される方が多いんじゃないの……？」

「んー……僕はナンパとかは無理だよ、そーいうのやったことないし……多分向いてないよ」

「向いてないなら向いてないでいいさ。
　無理にやれって言ってるわけでもないし」
「でも、手ほどきはいつでも受け付けてるからね」

ひらひら、手を振る。

「必死過ぎる、こっちの兄さんは」

「軽薄すぎるとああいう目に遭うでしょうけど…」
「奥手すぎてもモテねえとは思うんで、なんか上手い具合にやると良いんじゃないですかね」

雑　興味なさげ

「そもそもだなあ！刺されるってことは相手が本気ってこと。
　つまり私は刺される要素がないのだ。
　なぜならぜーんぶ遊びだから。わはは」

「今日はおれも寝ることにします」
「記録したいことがあるので」

おやすみなさい、と手帳は閉じて。
歩いていく。また明日。

『自分がそう思っても相手が思ってなかったら背中刺されるものなのでは？』
ジェスチャーをやめ、そう書き足す。

「アッハッハ！そうかもねえ、
　軽薄すぎるのはいけねえ。俺は全員に対して本気だから」

「……まぁ、別にモテたい訳じゃないし気が向いたら頼むかも。
そもそも……僕がやりたいような恋愛なんて僕が生きてるうちには無理だろうしさ
それはそれとして、最低」

「あ、寝る人はおやすみ」

「相手にも遊びだと思われてる程度でいいってことなんでしょうか…」

「両方とも遊びだと思っているか、両方とも本気だと思っているか」
「相手と自分で温度感を同じに出来るのが一番なんだろうね、軟派って」

「いや私も私に本気になってくれて一途で私のやることに文句言わないような子と大恋愛はしたいんですよ？でもちないんだよななぜか。
　そこ！最低とか言わない。
　世界に適応した合理的な恋愛体系と呼びなさい」

「枕詞がめちゃくちゃ多いな」

「そうだなあ。温度感を同じくするのは大事だ。
　本当に一途に本気だったら、全員を愛する俺とは合わねえだろうしな。
　一夜だけ本気になるんだったらハードルが低いし、気が合うワケ」

「恋愛相手に対して求めるものが多すぎないか？」

「そりゃ居ないだろうさ……合理より倫理を優先してくれ。
温度感かぁ……やっぱり恋愛は難しそう……」

「なんでやろな、絶対現れんやろ…」
「…と思ってしまいます」

「世界にはともかく女性に不適応だから実現しないのですねぇ～」

此処に酒はあるのかしら。喉が渇きました。

『そういうものなの。』
ふーんと言った感じである。

「難しいが、だからこそ実ったら格別だね」
「残り少ない命だ、コイビトとは言わずとも誰かと過ごすのはいいぞ」

「誰とも過ごさないのも宜しいですよ」

全員を愛するなんて全員を愛していないのと同じですから！
なぁんて、勿論申しませんとも。貴方のお好きに！　さあ曙の光を仰いで！

「おっ蛇節～」
天邪鬼ならぬ、天蛇アマノジャの相手はするだけ損、と、
傍から見ててだいたい決めている。ここに来て一番の適当な返しだった。

「……誰かと共に過ごすも、過ごさないもそれぞれ良さがあるんだろうね」
「一人でいること、誰かといること。温もりを求める者も静謐を選ぶ者もいるだろうから」

「……興味自体はあるんだけど……う〜ん、誰かかぁ……まぁ……機会があれば……かな……」

「さて……じゃあ吾はそろそろ仮眠しようかな」
「じゃあねみんな。明日また起きて会えますように」

瓦礫からトン、と立ち上がれば屋内へと入っていく。

「恋愛なんて特にどうすれば正しいなんてものがなさそうですし…」
「好きにしたらいいんじゃ…」
「あ、でも刺されて死ぬような真似はやめた方がいいですね」

人によってはそれもそれでアリかもしれないけど。
欲望は人それぞれ。

それが正解、大正解！
酒があれば乾杯の音頭をとるのに、嗚呼やはり梟のお膝元は生きづらい。

『少なくとも、誰かそばにいて欲しさはある。ひとりぼっちは寂しいから。』

「お疲れ様です」
眠りにいく姿を見送る

流されて尚正解という態度をとられると、
それはそれで釈然しないというか。難しい目を向けていた。

「終末を前に刺されて死ぬのも一興っちゃ一興だが、
　流石に勿体ない気持ちがあるわな」

「刺されるのもまァ、冥土の土産話に良い良い」
「歓声ならお任せあれ！」

『刺す刃物、思い当たる節が今剣の頭のあれしかない。』
どこかに売ってるんだろうけどそれはそれで探すのが面倒くさい。

「絶ッ対刺されたくない……というかそういう恋愛はしたくないし……

一人が寂しいのはよくわかる……まぁ、でもこういう所なら寂しい思いはあまりしないですむ……のかも」

「あ、おやすみ」

「絶対に刺されたくない
　というか世界の滅び以外で死にたくない」

「一人がいいというものより一人は寂しい、いう方が同意できますね」
「あんま一人になること自体がないからっていうのもあると思いますが」

「…刺されるのを観覧しようとしとるわ…」
被害に遭う側じゃなければそれこそなんでもいいだろう

「な？」
「ナンパ男にもマジでモテるのとそうじゃないのがいるの分かるだろ」

肩を竦めた。

「おやおや、そんな難しいお顔をされちゃァ」
「まるで梟の一員のようですよ」

貴方は享楽をお選びになったはず！　享楽を、ね？

「眠る方々は良き夢を！」

とは言え、ずっと眠っていたい程の夢は
見ないでおくのをオススメ！

「全くだな。勝因は色眼鏡があったからかな……」

「俺は曙光に定住しちゃいるが、
　所属こそは実はしてないぜ」
「梟に毒されつつあるのはマジだな……」

享楽を選んだ。それは確かだ。でもそれは───
おっといけない。相手しない。無心無心。

「色眼鏡は俺も乗っかってるぜ兄さん」

「じゃあ負けじゃねえか」

「負けてるじゃん……まぁナンパにも色々あるのがわかった。

あと、恋愛は人生経験の少ない僕には難しいのも分かった」

『色眼鏡マイナス200』
書き込み。

「どんどん色眼鏡がマイナスされていく…」

「あっ観覧席の予約が始まったら是非教えてください」
「刺される時の……」

わたくし愉しみにしておりますので！
世界が終わる迄にきちんと刺されて頂きたい！

『最終的にどれだけマイナスになるか見物よ。』
今トータルでマイナス300です。

「おや？」「そうなので？」
「どうりで！」

梟に毒される、と言うか。
梟首会がお似合いだなぁと思いました！

無心が正解ですよ？

「底をぶっちぎらないといいですね…」

本人の頑張り次第だろうな。

「勝負あったところでそろそろ曙光に帰るか」
「俺はまだまだ起きてるつもりだから、
　寂しくなったヤツは遊びに来いよ」

ちゃんと帰ろうと思ってた。意地張ったわけではない。
こういう言い訳を考えてしまうのも思うツボであった。

「最終的に1000は行きそうだな……
あぁ、帰るんだな。
それじゃまた……僕もそのうち帰るよ」