「家族がかなり過保護でね、お陰でこの通り。と言っても、生きるに困らない生活なんかじゃ全然なかったけどね。混沌の中には色んな形の石があるわけだね」

譲ってもらえたので、ヒノワの顔にネズミを押し付けようとしている！

「オレァどーしよっかな〜。別ンとこも久々に覗きに行くかァ。最近穴蔵続きだったしぃ」

おろおろおろ……（ケンカの果てにどちらかがケガでもしないかな……）

「ねずみの素焼きならまだマシでしょ。」

　このメスガキ、食える。

「おお」「胃に悪そうなの飲ンでら」

ちょっと臭いな、と思う程度。
けれどまあ、美味そうに飲むなら見ているだけのガキ。

「胡散臭いとも思ってねえよ、口だけの偽善者野郎だって思ってるだけだね！」

暴言に次ぐ暴言。
殴られても文句は言えまいよ。とはいえ殴られるのが嫌で一定の距離を取っている姑息なガキではあるが。

「束の間の心地よさに溺れること。
　秩序を以って現実と向き合うこと。
　それらに夢を見出せるでしょうか。
　あたしは混沌の中に一抹の光を見たい。
　砂漠で金を探すようですが」

「カカッ！過保護ってか。METROじゃ、ま、真艫な親はそーなるわナ」
「色んな形の石っつーにゃ汚え気もしますけどもネ」

文字通りの吹き溜まり、めく穴蔵ゆえ。

「夢見るんは生きとる人だけ。うちは死んだようなもんや」

「せやから〝幽霊〟とか〝亡霊〟でええ言うとる。熱心なのはええことかもしれんけど、うちンこと掘り返しても、出るのは花の種どころか骨だけやで」

「でも、夢を見ながら死ぬのも。
　それは素敵だと思うのだけれど。」

「んだよ。つまんねえ！」

悲鳴も上げない。嫌がらない。途端に顔を顰めて串は引っ込めた。物理で暴力を振るいたいわけじゃない。
鼠の串については、食えるのか？と匂いを嗅いでいる。いけそうかな……齧ってみよう。

「いンじゃね、砂漠で一つまみの砂金夢探すくれエは」
「やる事に文句言うヤツもいねエだろ」
「オレぁ純粋に見守っていてエな、そりゃ」

「素敵ィ思うんなら、そうすればええ。うちは遠慮しとくけどな。何しても変わらんこと分かっとるんに、道化する趣味はないんよ」

「私は命と天秤にかけたら、夢を諦め……あき……
　諦められるかな……」

つらそう。

「胡散臭いよりも下があった…！！子供の期待に応えられなかった私が、悪い！！」
また10cmぐらい小さくなり、膝から崩れ落ちた。あっ、塵芥。拾っておこう。

「ここは砂漠か…まあ、そうだな。見つかるといいな。
　得難い物を得た時、きっと何よりの宝になるかもしれない」

「一応、慣れてないと普通におなか壊すよ。」

　齧るか齧らないかのタイミングで言う。

「オレァ結構好きですけどね、鼠の串焼き」

母の味って感じで。
あくびを一つ。そろそろ寝るかァ。

「おう、寝ンならおやすみ」
「オレも今日の寝床探さねエとな…」

「鼠の串焼きってよくある料理なんだ」
こわ……

「寝床」

「寝床かぁ……」

きょろきょろ、辺りを見回してみる。
……そんな所、ある？

「いや本当に笑い話さ！箱入り息子といった所で、お陰でご覧の通りの醜態を晒しているわけだけど…
でも、汚かったとしても、貴賤はないさ。そこにあるのは、1つ1つの違いだけ、私にはそう思えるから、ここが好きなんだよ」

「……食えるな」

ある程度腹は強靭な方だろう。
忠告、母の味、それぞれを聞きながら串はしっかり平らげた。

「オレも寝床探すかな。人に見つかるような場所で寝たら何されるかわからんし……おっと、失礼」

ふらふら。何やら怪しい足取りで幾人（主に大人）にぶつかったかも。くすねられるなら何かしらの私物を拝借したやも。

「カカッ。寝床に困ったらオレんとこおいでョ。意外と快適だゼ？」

どうだかな。
気楽にそう言って、んじゃ、オヤスミ、と真艫な挨拶を置いた。メトロの奥へ。

「寝床は常に数か所確保してから動いてるから。」

　バックアップも用意周到。

盗られる財産も土地勘もないのでこの辺で寝る。
転がっております。

「日の出ももう近い頃合いだな。…私はまだしばらく起きているが」

"荷台"に腰をかけて落ち着く。

スリに成功・失敗したかは受け取り手次第。クソガキはその場を後にした。

「寝るンなら寝とき。砂も慣れたらええ寝床やと思うわ。嘘やけど」

「話すンの飽いたし、うちも飽きるまで睡眠しとこか」

元職場から持ってきた何らかの薬瓶とかを盗られたかも知れない。

「………」

スられ判定：[1d6]（3以下でスられる）

「……私の事知ってる人も居なさそうだし、
　いっか、この辺で……」

もう少し起きているつもりだが、
寝床はここで済ませる事にしたらしい。そもそも
この様な場所に慣れていない事もあり、警戒心は薄い。

「皆、気をつけて眠るんだよ」

「…ふむ」

何やら探られたのに気付いたが、特に追うような事はしなかった。
荷物が大き過ぎたのだろう、何も盗られる事はなかった。

「夢よりは先に、場所を探す必要がありますね。
　安全もまたここでは貴重なものでした。
　あたしのような子供にとっては、なおさら」

「大人びたことを言うね。
　私もそれほど大きくはないけれど。」

「寿司が[2d6]皿食いたいのだ」

「8皿でも構わんな！わはは！」

「安全を期すならここよりかは梟首会の方が良さそうだが…」

「小さい子供と中ぐらいの子供ね」

「可能な限り、という話です……今あたしが居たいのはここなので」

「そうか…ならば好きにすればいい。
　私の目がある内ならば間に入ってやれる」

「割とガレキの下とか、結構な穴場よ。
　更に崩れないことを調べておかないとだけれど。」

「私も私も」

最も頼ってはいけない大人

「なるほどなあ何も分かっていない」

「お前は…大丈夫なのか……？」

白衣の女に対してかなり疑問形。

「何でこの人たち生きてるの。」

　って人が滅茶苦茶多い。

「勝たなければならぬ。それだけは分かるぞ
やっぱり分かっていない！」

「噂に聞いてたよりは皆さんフレンドリーだから、
　多分大丈夫でしょう」

木を見て森を見ないタイプだ。

「存外目の届く場所の方が安全なこともあるのでしょうか。
　秩序に期待するには少々混沌としすぎていますね」

「私は友好的に話しかけるのであれば相応に話すし、
　逆に敵対的なら全力で殴るよ。」

「ちなみに、安全っていうよりかは本当に一休みくらいだし。
　寝心地は良い場所なんて殆どないから。」

「ほ～ら、友好的ですよ～」

両腕を広げてみせた。

「そうだな、今日は荒っぽい者は見てない。そういえばまだ相克を見ていないからか…」

（敵ならぶん殴るし、味方なら協力するのだ。
ん？味方が敵ならどーすれば良いのだ？）

思考中……

「友好的とは……なんだ？？
むむむ……」

「ご教示頂きありがとうございます。
　明日も夢を探さなければいけませんから」

「この時間でも賑やかねぇ」

是は探索に生きるモノ。それなりに賑わう場を眺めては、洞穴で使えそうなモノを漁る。
……っても、大半が塵芥ばかりだけれど。

「この時間で賑やかなのは異常だけどね。
　私もそろそろ休もうと思ってたころだし。」

「それじゃ、また明日。」

「頼れる方の庇護を受けたり、助け合いをするのも
　一人で居るより良いかも知れません」


「まあ、ここではどうかな……」

表面上がフレンドリーであっても、誰かの人生を背負う感じではないものな……

「おやすみなさい、中供様」

「ああ、よく寝ておけ…」

「異常だろうとなかろうと、此処じゃよくある事の1つだもの」

おつかれさん、とひとつ手を振る。
昨日見た顔が今日は居ない、なんて事すら珍しくないのだから。

「この辺そんなに物騒なの……？」

今更。

空の酒瓶を放り棄てる。
割れて砕けて、甲高い音。
いずれは。あれも塵芥になるのだろうな。

「酒気が足りないな」
「安酒でも見繕うと……」
「METROに商店なんて高尚が過ぎますかね」

浮ついた足で彷徨き始める。アルコールが足りない。

「他と比べ好き放題する者は多いだろうな…」

「……」


「……急に不安になってきた」

「そりゃぁね」

甲高い音が響いたもの。なんせ此処は己を試される場所。
ある意味自由で、ある意味無法の場。こうも和やかな方が珍しくも無いんじゃない？

「庇護だ助け合いだの、出来るといいわねぇ」

裏切られたりしない自信があるのなら。
けらけら笑って示すのは、深部へ染まらぬような警戒の促しなのだろな。

「…追われる身であれば絶好の隠れ場所だろうが、別の危険に対処できたらの話だなそれは
　何故このような場所に赴いたのかは知れないが、慣れるのも手だ」

「絶賛追われている身なので……多分」

「……慣れ、ますかね……」

笑ってるぅ……

「住めば都とも言うんじゃない？」

「知んないし、生き延びたらの話だけど」

ん～、塵芥塵芥塵芥。なんとも見慣れたものばかり。

「そうか…何をしたのかは聞かないが……」

少し前に聞いた物騒な言動を思い出し、訝しげな視線。

「いや、いやいや、なんか凄い事したみたいになってる」

「誤解ですよ！私は上の人の指示に従ってただけで……
　でもないけど……あ、いや」

今弁明をしてもあまり得にはならなさそうだ、と思い直す。

「……都、都……居なくなっても
　後腐れのなさそうな人がその辺をうろうろしているのは
　魅力的だけど、ここには器具も道具も……あ、いや、こほん」

「その後腐れなさそうな人というのにお前も入ってる可能性がある事は承知しておいた方がいいぞ」

この場に居る者は大体がそうだが、若干呆れるような声音。

「…………」

スン……

「なはは、こりゃ馴染めそうだこと」

"修理屋"の眼差し(?)に同意するような笑い声。
ま、過去を詮索するような大層な趣味はお持ちじゃないもの。
大事なのは今よ、今。

「全てが自己責任、ってヤツ。朝日を拝めるといいわねぇ～」

ま、ソレも真っ黒なモノだけれどね。終わりかけでも明日は明日だから。

「ひぇ……」

どんどん怖くなってきた。逃げ出したいが
もっと悪い状況になるのは明らかであり……

「……す、素敵なお耳と素敵なメットですね」

とりあえず媚びていく事にした。

「実際お前のようなどこにも行き場のない者は多い。
　…だが、まあそんなに悪い奴じゃないのも見かける。そういった者に出会えるといいな」

落胆を見せる白衣の女に僅かばかりの希望を見せておく。

「…そうやって謙るのも、まあいいだろう。だが相手は選んでおけ」

メット越しに頭を掻きながらそう口にした。

「或いは自分の手駒、手下を作るかね」

「結局此処じゃ、身分も貴賎も関係ない者同士だもの」

その場合も、下克上ってモンはあるけどね。
媚びるような言葉には、ありがと♪なんて笑ってたことだろ。

「私の場合は手下になる方が早いかも……
　でも……うん。頑張ってみます……」

媚びの感触は悪くなかった……はず。
えへへ……と卑屈に笑いながら、膝を抱いて縮こまった。

「ま、ソレでいいならね」

随分卑屈だこと。明日にはどうなってることやら。

さて、今は静かな時間。ゴミ漁りには丁度いい。
鼻歌交じり、塵芥の山を拾い上げていくのだった。