「あーめあーめ ふーれふーれ かーさんがー♪」

雨宿りしながら歌ってます。

「好奇心は気をつけなきゃあかんで。
私は子供の頃木の上が気になって
登ったら召使いたちが青ざめた顔して
木の下に十数人集合したからな、そして
私も怖くて降りれんくなった」

「天に召します我らが神よ」
「何卒恵まれない俺にだけお恵みください」

どさどさと種子を落としていく。

作った骨牌をまた一つ、火にくべる。
燃え尽きる様子を尻目に大欠伸。

「……集めてどうするんだろう。」

まあこれの場合、特別どうするということもなく、ただ他にする事が無いから業を集めているに過ぎないのだけれども。

「ま、フツーにしてたら監視は何もしてこおへんよ。」

「あったあった、小さい頃木に登って降りれなくなるヤツ。
　生まれとか品位もあんまり関係ないよな、そこらへん」

「寂れた診療所の場所は～っと……」
今回はちゃんと傘を持って、目的の場所を行ったり来たりだ。

「フツーに護身用の武器探してるだけやで……」

せやろか。

「天にメシマズ……我らが神よ……」

ちょっと違う。

「憂いて我らは抱かん」
「嘆いて、全ては通らん」

「これが、【許し】なのだろうか...」
そう考えながら、歩いている

「なーむー。」

「天にまずまずの我らが神よ……」

そこそこの評価。

「眼帯の人この辺の人じゃないね？」

「神がまずまずでマズい飯食ってるから、
　この世界はこんなことになってるのかもしれんな」

別の場所に行ってきたのか、
何かを燃やして満足げに戻ってきた。

「神も苦労してんのかな……
　してなかったらそれはそれで……」

「俺か？
　そういやまァ、コッチの方にはあんま来てなかったかもな」

「んー」

少女はせっせとお仕事中ゴミ拾い。

「神様も出来高制なんでしょ」
「甘えるなって誰か言ってやってほしい」
「信心深くない人がコッチの方ふらふらしてたら捕まっちゃうんじゃない？」

「ドクの兄さんがまだ帰って来てねえようなら、
　簡単な家事だけやって曙光の方に帰るか」

「今日の雨はあっちの方に行くって占いで出たんだ……
　つっても君らは絶対押し寄せるんじゃないぞ」

「あの人ドク、さっきメトロで子供相手にしたり医者面してたな」
「絶対いつか食い物にされる」

「へえ、……こんなもんか……
　やるべき事があんのは然程……悪くはない」
相手に紙片を千切って寄越した。
そっちの勝ちで良いというところか。
だらけた風に伏したが監視の目を見て立ち上がった。

　ぼやぼやと建物を見て回る。足取りは観光気分だ。

「ぁー」

貴石を見つければ、またなめなめがじがじし始めた。

「……どこでも石ころ食べてるんだな」

「あはは　こうです　ね」

「かみ　つかうの　めんどう　なので」
「ぼくは　つかわない　ですけど」

｢ゲッ、なんてモン食ってんだ！
勿体ねぇな…！｣
そういうことではないかも。

「...たまには、こんな気分で生きるのがとても【気分が悪い】」
「確立された上層という【助け合い】の舞台にいるよりとても良い...」

なめなめ……

「メトロの方から帰ったのを見たけど、
　往診にでも行ったんだろうな。大忙しで何より」

「曙光の方も、曙の時間から遠いからか静かだった」
「静かな時間が続くと暇を持て余しちまうぜ」

｢はあ…コイツは飴と石の区別もできねえのか｣

「まぁ唾液まみれの貴石でも」
「曙光なら高く焼けるだろう」
「ここでは二束三文だろうが」

「ふ〜オシゴト終わりっと」

空になった荷台を引く男。
片腕に抱える紙袋からソフトフランスパンに具材をこれでもかと挟んだトールサンドイッチを取り出して齧る。
挟まれているのは……多分海老とアボカド。ウメェや。

「護身なぁ。
一応、護身のために武器はあるんやけど…あんまり使いたくないんよなぁ」

モグモグ……。サンドイッチをもさもさ齧りながら周囲の喧騒に耳を傾けた。
停めて良さげなところに荷台を路駐。腰掛ける。

「…メトロ、子供いるんか……」

「そりゃいるさ」
「娯楽が少ない地域でやる娯楽なんか一個だけだろうし」

「梟で見るような無邪気な子供じゃなくて、
　擦り切れちまった可哀想なガキが多かったな、METRO」
「俺が相手するには10年ぐらい早いが、世界は10年も保たねえ」

「それ以上に鼠が繁殖しすぎて最終的に鼠だけにはなりそう」

「ねずみ　ふえるの　はやい　ですか」

「……」
「うめよ　ふやせよ　ちにみちよ」

「…そうかぁ。
なんか、嫌やなぁ」

胸が痛んだ。

｢なんだそれ、可愛げがねえなぁ
大した業も持ってなさそうだし…｣

｢ま、誘惑にはカンタンにひっかかってくれるかもしれねえが…｣

「どうせ五体満足で生きたって遠からず世界は終わるんだ！」
「すべての子どもたちが平穏に暮らしてほしいと思うなら、
　生まれ変わったあとを祈ってやる方がよっぽど有意義だし」

「それに多分、彼らはそういう生き方が常識だ」
「否定される方がよっぽど傷つくと思うぜ」
可哀想と言った口で何ではあるが、と自省もしつつ。

「ンだョ、梟ンお膝元まで来たのにMETROの話かァ」

日常だ。可哀想がられる意味はよく分からないので、こういうノリにはついていけない。
何が可哀想なんだろう……。

「お嬢が希望ならお嬢の業を俺が借りて恵まれないメトロの子に再配布してくるけど」
「足りないかもしれないのでちょっと曙光で倍に増やしてからになるけど」

「鼠についてはまあ……」
「種族ガラなのかねえ、純人もまだ負けてねえとは思いたい」

「増やしたって一掃ワイプされるだけなんだが」

｢種族ガラ…なあ｣
自分も蛇っぽい所はあるけど一緒にされたくねえな…と言わんばかりの顔。

残りのサンドイッチはMETROの連中とわけっこしよ。持って帰ると決め、荷台に紙袋を積み込んだ。

「可哀想がったり傷つくとか言ってみたリ、良く分かんねェな、地上の連中ァ」

なにがしたいんだ……。

食べるものが無くなると手持ち無沙汰だ。金具は塒に持って帰る用だし……その辺の石ころを拾って口に入れた。
監視員に睨まれた気がする。気のせいかも。

「ハハ、君が地上の連中を理解しようとしてないんじゃないか？」
「俺の言葉ひとつとって地上の連中って一括りにするところがな」

にこやかに笑っている。自分の思想は自分だけのものだ。

「だって分かんね〜ョ、他所のコトなんざ」
「あんたの名前も知らんシ」

首を傾げた。石ころをガリガリやりながら、頭の上にはてなマークを浮かべるばかり。
単に頭が悪いだけだ。想像力もない。

｢なんでどいつもこいつも石食ってんだ…？｣
さっきも一人食べてたところを見た。

「ェ〜……歯が痒いカラ？」

獣みたいな物言いだ。普通に呑み込んだ。

「石と食べ物の区別がつかないんだよ」
「ゴミ箱に次から石入れとくと食費の削減になるね」

「石と残飯なら流石に残飯を選ぶかなァ……」

そもそもゴミ箱を漁るなと言う話で、此処でやると凄い顔をされるので自重している。
一応学習してるから。一応。

「そうやなぁ…。
でも、子供は元気でいて欲しいわ」

拳を握りしめた。

「いや、そもそもメトロ行くつもりやってん。
そのために武装してるし。
あと金具高く燃やせるって聞いたし」

「ハハ！そりゃ失敬」
「名乗られてない奴のことはあんま覚えるに値しないか」

皮肉ではなく、素直に。

「ちゅか俺もMETROのこと勝手に語ってるし、
　同じ穴の貉ではある」
「今度また地下遊びに行くよ。教えるにも知るにも、それが手っ取り早い」

「石……」「美味しいのかな」
がりっ……

「全然、美味しくない……」

「そういえばさっき貴石噛んでるやつもいたな」

「石にスパイスかけて焼く料理は地元にあるが」
「あれってスパイスの風味を楽しんでるだけだからな」

石を食えるほど、頑丈な顎のヒトではない。

ゼリー状の携行食を食べている。

「……気づかない内にMETROに戻っていたか？」

向こうの面々が多いような。

「METRO来ンの？なら武装より変装した方がいーゼ。ボロ布とかデ」

あからさまに武装してくとそれはそれで狙われる。ちょっと心配だ。

「METROじゃアそもそも名前なんテ滅多に名乗ンね〜から別に……ン？なんの話だッケ？」
「はぁ。別に勝手に語ってよくネ？ダメなノ？？気にしね〜ケド……？
律儀なオニーサンねェ」

｢俺はなんで石を食ってる奴が多いのかが未だに理解出来ねえ…
絶対他にいい使い道あるだろ！燃やして業にするとかさ｣

「好奇心は」「抑えられなかった」
「もう二度と、食べない」
(硬い石意思)

「別に美味くァね〜だロそりゃ。
空腹が紛れる気がするだけデ」

ガムみたいな扱いだ。それにしちゃ飲み込んでるけど。ガッツリ。

「ボロ布か。俺ってばボロ布来ても顔がいいからね。
　気品が隠しきれるか心配だわ。ま、覚えとくよ」

「そりゃあ、俺は優しくて誠実な男として地上で有名だからね！」
「律儀さをとっても色々魅力があるが、わざわざ減らすような真似はしないのさ」

「アレ、お医者サマだ。なんかあんま梟ンお膝元ってカンジしね〜よナ」

時間帯が悪いかも。

「入口で泥水啜って胃の中を腐らせて」
「土で出来るだけ服汚して紛れると友好的に接してくれるよ」

「へえ、METROに来る奴って今日明日中に死ぬ覚悟しなきゃいけないんだ」
「さっき行ったときあまり歓迎されてなかったのは、
　やっぱりこの俺がハンサムすぎるからってとこかね」

「そういう点では、地上で面子に会えてるのは暁斎だ」

「随分と、腐食性のある」「泥水だね」
「……そこまでしなくても、いいんじゃないかな」

「気品で浮浪者釣らね〜ようにナ」
「フゥン……？？ま、誠実なンは大事よナ。仕事もしやすいしィ。優しさはちっとどう作用するか分かんね〜ケド……」

METRO、聖人は大体が早死にするため。

「入口にウェルカム泥水置いてネ〜から各自でその辺の水溜りカラ啜ってもろテ……」

「歓迎……の定義がちょっと分かんね〜ケド、奥に入らなきゃ別にヘーキじゃね？」
「あー、でも梟も黄金虫も苦手ってヤツはまあまあいるカ……。はみ出しモンの烏合の衆ってそゆとこある」

自虐ネタなのでは？

｢特に定位置を持たずにコロコロ場所を変える場合はいいのか？｣

ここに居るのも一時的に財産を守るためらしい。

「俺は浮浪者でも愛せるぜ？
　遊んでもいい年齢だったらに限るが」
ガキんちょやご老人は畏れ多い。

「俺は梟苦手にしてたけど案外居着いちまってるし、
　知らないから、で忌避しちまうのはきっとどこもそうだ」
「架け橋になれたら何よりだね。曙光はマジでいいとこだから」

「METROに行くなら、怪我には気を付けたほうが良い。
　万一のことがあれば、僕が診なければいけない……」

「え！そうなん！？ヤバい奴らいるって聞いてたからつい…」
「ボロ布かぁ…ちょっと探してみるわ…」

ボロ布でお嬢様の高そうな服を
隠せるかどうかはわからない。
ちなみに木の棒とゴミ箱の蓋を
盾にしてるまるで初期装備のような
武装だ。武装とも言えんかも。

「なんでメトロで医者なんかやってるんだ？」
「大したリターンもないでしょ？」

「俺はドクの兄さんと違って医者じゃないが、
　自分の面倒は自分で見られるんで、
　面倒ごとは持ちこまないぜ、任せておけ」

「さァ……？そもそもMETROの連中なんざどんな事情とか思想？とかあるとか知らんシ。しれっと混じってりゃいーんじゃネ……？」

オレは気にしないケドなあ、なんて首をひねった。この男が気にしなさすぎ説がある。

「ェ〜？辞めとけョ。折角のイケメンが鼻欠けで台無しンなるゼ、カカッ」
「フゥン。そーゆー広報活動的ナ？物好きネ。
METRO連中はどっちかっつ〜と黄金虫にも梟にも見下され慣れてンじゃね〜カナ〜……？？」

それで警戒されるのかも。分かんないけど。
自分以外の思考回路なんて理解不能だから。

「Metroにも、お医者さん居たよ」
「臓器提供が、好きな人」「だった」

「明日にでもメトロ行こうかな。
護身の武器だけ忘れんようにしないとね」

「奥に入っとやべーし、手癖の悪ィヤツが居るのもそうだけどネ。下手に武装するよか、目立たん方が自衛にゃなるかもデス」

その武装だとリンチされたら瞬く間に毟られそうだし、とは言わなかった。流石に。

「METROでケガしてもMETROの外で治療したほうが安全だゼ」

「メトロは泥水啜らんと入れへんの？
せ、せめてチョコ水で許してくれへんか…誤魔化して…」

「臓器提供大好きドクターとか
聞いたことないで、もっと別のもの提供した方がええって」