「こっちのオレに遭いたかったんだろ。ヘヘ……願い、叶っちゃったな。」
「剣ちゃんがオレから見て左側にいることを認識してくれてて嬉しいよ。
　右側とか言われてたら殺さなきゃいけなかったから」

「何もおめでたくない！！！
事前に説明されてたらついて行かなかったし……！！」

「いいじゃねぇか、悪い思いはしなかったんだろ？」

『あぁ。なるほど。』
『誰しも間違えて入ることがあるから、気にしなくてもいい、のか。』

「でもよかったんだろ」
ガキかと思ったけどこいつはもう一人前の男だったんだな……。
ぱちぱちと拍手をしている、おめでとう。

「多分あいつ殺された後も」
「相手が危険だって分かってたら銃口向けられた時警戒してた！」
「って言うんだろうなあ」

「そうだけどぉ！そうじゃなくてぇ！心の準備とか色々あるでしょ！？」

「なんだ、大事なものってそっちか」
「いける店、増えてよかったね」

「なんだテメェ……！牌バトルをオレとしようってのか！？
　上等だコラーーーーッ！！ホーホアアーーーーッ！！！！」
（牌をメチャクチャにぶん投げようとする）

「心の準備できる余裕が増えたな、良かったね。」

『ここにも、そういう店はあるんだ。』
かり。

「うー……良くない……何も……良くない……」

「ええもちろん、ここだからこそある、とも言えますね」
「極上の快楽をお求めでしたら、
溢れんばかりの業をお忘れなく」

「ここだから、あるんだよ」
「梟じゃ、きっと怒られるし」
「METROじゃ、人を買う・・なんて」
「まだるっこしいこと、しないでしょ」

「ま、こういうところだからこそあるもんだからな。」

『まぁ、私には生憎相手がいないから無縁だろうな。』

このところ読み合いは負け続きだ。
勝敗はさほど重要でもないのだが。

「すみません、あなたの業を増やしてしまいましたね」
「悪く思わないでくださいね」

負けた側の言うことではない。
既に視線は手帳に向けられていた。

「そうだね。メトロじゃ支払いが致す前だもんな」
「後頭部に強めの一撃を加えて支払い完了」

「梟首会も知識のローション垂らして秩序で弱者も優しく擦ってくれるって聞いたよ」

「すげぇな、頭に包丁が刺さってて言動が致命的に終わってる以外は連戦連勝じゃねぇか」
人として何かを犠牲にしてる奴は強いのかもしれないな……。

「アアアアアア　業が……積もっちまうよォーーーーッ」
「業のある話ばっかりしやがってるしィーーーーーーッ」

「いや、いいよ……謝らなくていい……
　悪くは思うが。許せねえ……
　あ、オレのことはイケメンって書いといて」

「いえいえ、相手がいなくともしたけれらできる。
そういうお店ですよ。あの少年がハジメテを捧げたのは」

「興味は、あるんだ…？」
「僕がいい人、紹介してあげてもいいよ」

剣刺さり─顔面に自信有り。本人談。

「恥ずかしいから口に出してそういうこと言うのやめてね……？？？」

「オレも数えればまあまあ負けてるぜ　まあまあ……？
　なんでそれしか負けてねえんだよ？
　業が……積もっちまうだろうがアアアアアア」

「早く速やかに殺してあげてほしい」
「願わくは末期の水を俺に取らせないでほしい」

にこにこと笑っている。
多分飽きるまで止めない。怒っていい。

「で、知らず知らずの一回目はともかく二回目はどの店行ったんだ？」
もう今は懐が終わっててすぐに参考にはできねぇけど、おすすめを聞いておきたいなって……。

「知識のローションってなんだよ、くっつく言葉じゃねぇだろその2つ。」

「キチガイがいるって聞いてきたんですけど」
「なんでしょうかこの生ぬるい雰囲気は」

「…………………………………………」
思考。

『あぁ、そういうことか。』

「今は一人の少年がお店で大人になった話だよ。」

「キチガイが珍しいなら咥えて庭に穴掘って大切に埋めてくれないかな」

「２回目は行ってないし！行く予定もねぇよ！！
そもそもこないだが初めてだよ！！」

ストレスが限界に達したのか立ち上がって地団駄を踏んでいる

『いつかは大人になるもの。それがたまたまそれだっただけだよ。少年。』

「そうか……高いもんな、気軽に予定は組めねぇよな……」
悪かったって。怒った理由は多分、懐事情なんだろうな、ごめん……。

「オイ！キチガイなんて言葉を使っちゃいけねえよ。殺してやる！」

少年のプライベート事情については記録を悩んだ。
でもな～　すべてを記録しなきゃいけないしな～

「いや犬は鼻がいいので大体どんな話題なのかはフェロモンでわかりますよ」
「雄と雌の飼い主はしょっちゅう交尾してたので」

「金は……高いけど……そうじゃなくて……はぁぁぁ……

どうせなら別のことで大人になりたかった……」

「おとな……」「そう」

「おやどうも、もう噂になってるんです？
まあ渦中の方はまだいらっしゃいますし、
今は一人の少年の成長を皆様でイジ、祝っているところです、ええ」

「二回目、いかないんだ？」
「よっぽど変な店、だったんだね」

「それって、かわいそうだな」

「オイ！あんまり卑猥な話題をするんじゃねえよ
　剣ちゃんが……恥ずかしそうにしてるだろうが！
　ごめんよ剣ちゃん……もうちょっと深くしとくな（ズブ）ぐぎゃああああああああああああああ」

「キサマか」
「どの犬に断って狂犬に興じているんだ？」

「狂犬の自負プライドとは……？」

『剣……………………。』
うわぁとみている。

「いや、変な店じゃなかったけど……あーいうのはもういいって言うか1回でいい！」

「あとなんであいつは自分で深く刺してんの……？」

「オレが……狂剣だと！？
　それは……ちょっと……いい異名だな♪
　フン。オレは剣ちゃんに断りを得てるぜ……」

「まぁなんだ少年、次は優良店見つけるといい。」

「犬と剣か……」
そろそろ剣の方が床を舐めて静かにならねぇかな、と思った。
いや、転がってもうるさいかアレは……。

「バウバウッ」
「犬のナワバリでは犬に許可を得るのが筋ってモノだぞ」

誰かに骨牌叩きつけてもいいのかもなぁ、と思いつつ手持ちの牌を眺める。

「紹介してもらった店だからまともだよ！多分……」

初めてだし、分からないが

「狂剣って良い異名か……？ 異名に詳しい人教えてくれ」

「そういうのも」「ある」「健康なら……」

と言いつつやや赤面

「男の子は『狂』とか『剣』って言葉が好きなんですよ」

シスター談。

「じゃあ、許可を取るか……
　殺していいか？或いは、オレを殺してくれ。
　いいのか？ありがとう！！！！！！！！殺す」

「うちの店、遊びにきなよ」
「見比べって、大事だもんね」

「恥ずかしがる割にはその話続けるんですね」
「思い出して発情してるんですか」
「フェロモン駄々漏れですよ」

「アイツ、刃マンとか剣マンとか呼ばれてたしそれに比べたらマシなんじゃねぇかな……」

「やっぱこいつ梟から出したらだめだろ。」

「かかってこい」
「どちらが上か白黒つけてやるよ！」

「はぁ……なるほど？ 別に僕は好きじゃないけど……好きな人もいるんだな……」

「犬と剣で勝手に戦ってくれ……
後、店には絶対行かないからな」

逃げるように骨牌を切った

ふむ。
『男なら誰しもその手の話は好きだしな。』

雑に納得。

「俺知ってる。あーいうやつは近日また行くぞ。」

「行かない！もうこの話は終わり！！！
ほらそこの犬と剣を見ろよ！」

「その覚悟よし！上等だコラァ！！！！！！！！！」
「バギャアアアアアアバタバタバタバタバタ
　ブウウウウウウウウウウウウウウウウウン」

奇声を上げながら手を振り回して突撃していった。

「なんか娯楽小説にありそうなワードですよね、『犬と剣』」

『確かに。ありそう。』

「ありそう。」

「内容が全然想像できないな……それ……」

暫しの相克、その後。

「──ッ、はい犬が上！！！！！」

「ぐ　ば　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ！！！！！」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオッッ
吹き飛び、何かしらの瓦礫に激突し、埋まった。

「剣……頭のおかしい奴ではあったが悪い奴ではなかった……」
「墓ぐらいは……用意してやろう……」
埋まった瓦礫の傍にあった小石を墓標代わりに更に立てておいた、成仏してくれ

「その小噺のオチはこうです」
「『犬は剣よりも強し』」

『どうやら、どっちが上か決まったよう、だね。』
瓦礫の方に近づいてみようと。
不自然な歩みでそちらに。

「おあとがよろしいようで」

「お、負けてるの初めてみた。」

「犬こわ……」

「ふぅー、で」
「埋めてやったほうがいいんでしたっけ」
「成仏しろよ」

適当な残骸を足で寄せて埋め埋め。

「犬、つよーい」
「この調子で、全部倒しちゃえ」

「勝手に殺すな　いや殺……」

出てこようとしたが、更に埋まった。

犬は剣よりも強し。
記録した。

おやおや、と。
埋められてしまった。

ふらりとやってきた少女が歩みを止めて。

「あ、あの剣が刺さってる人……。」

ここでも何かしてるのだろうか。