「おっ寂しいこと言ってる奴発見～」
「こんな世界だからこそ睦み合うもんだろ。
　互いを肯定しあうのは最高の娯楽さ」

色男の発言であるからには、多くは当てはまらないだろう。

「良縁についてはそうかもしれねえな。
　はいはい、飽きるまでは程々に顔出すことにするよ」

「あ、ハイエナが集まってきた」

ハイエナが言う。

どこからよじ登ったのでしょうか。
廃ビルの群れの一つ、その中腹ほどから顔を出しています。
雨が降るならばきっとここだと思ったのですが
果たして答え合わせに丸はつくのでしょうか。

「嫁ぐ予定はありませんが、あなたにその台詞を言うために
婿探しをするのも悪くないかもしれませんね」

と、真顔で冗談を言った。
今は子供扱いされてもふふん、と鼻であしらう余裕がある。

少女は静かに祈りを捧ぐ。
それが己にできること。

「あ～こりゃ曙光に帰った方が良かったか？」
「あっちに雨が降ったらマジで君ら全員の顔覚えちゃお」

「……急にMETROで見た顔が増えたね」

「随分夢物語語ってやがる、まぁ娯楽っちゃ娯楽なのかもしれねぇけどな。」

「あはは、汗水たらして働くのも悪くありませんが、
やっぱり楽して稼ぎたいですからねぇ」

ハイエナ呼ばわりは否定しない。

「……ここにゃずっと監視他の目があるからか比較的安全ではあるしな、それはそうとして休まりゃしないが。」

塵芥すなを集めていたからか砂埃にまみれた眼鏡が出来上がっている。

纏めて完成した紙片を巻いて、オイルが残り少ないライターでかちりと火をつける。擬似タバコだ。

「っち、なーんで見知った顔が増えるかね。」

「？」

？

「うわ、急に人が増えやがる」
「あ゛ーっもう」
そりゃそう。

ごみ漁りに疲れたのか、ぼんやりと種子を手の中で転がしている。

「ふふ、まあ大丈夫だと思いますよ？
業稼ぎ目的じゃなしにあちらに残られてる方も結構いらっしゃいますし」

こそこそと移動してきた……
ついでに別所で拾った種子を処分している

「さて？どうなったかねぇ。」

「おや、雨かな？」

「こんばんは皆様。」

「うい、やっぱキラキラビルより目にやさしいな」

とことこ。

「あ、おてんば姫じゃん」

「…おー……？
　なんか降ってきたか…？」

「っていつの間にかすげえ賑わいだな…！？
　この場所ってけっこーモテてるんじゃねぇの」

「うわ、何でこんな所にまで来てるかな」

「それはこっちのセリフだよ。」

「あ、先生だ」
「約束通り、歩いてきたよ」
「種子も売れて、ほくほく」

「……うん、やっぱり業雨だ。すごいね、こんな感じなんだ。」
手持ちの業が増えたのを確認しながら。

「日付越えてゾロゾロと……あ、棺最院の嬢ちゃんだ」
名前を憶えていた。印象的な名乗りだったしな。

「観光って面だと曙光にもMETROにも劣るってのに、
　何が目当てで来るんかねえ」
「あ、ひょっとして俺とかか！なるほどな」

「来たかラセン君……」

「この薬ってこれで合ってたかな…」

空のラベルと新たに買ってきた薬を見せる。

【買い物チャレンジ】
【4以上で合ってる】
[2d6]

「……？あぁ、降ったのか？」

持ちきれない物（種子を除く）を燃やししまくっていたせいか、業が増えたかどうかを把握できていなかった。なんてこった。

「お、あんときの兄ちゃんおる。
おてんば姫って私のことか？？？」
「お医者さんもおるし、なんや知ってる人多いな」

ちえーっとした。

「こー言っちゃなんだが、綺麗なもんだなあ…。
　これを見られる奴がそれなりに居るってのは
　なんか……いーことだよな」

能天気に頷き、ガキっぽい目で頻りに天を仰いでいた。

「……雨……？ああ…そんな時間か…」

忘れていたらしい。

足跡を舞い上がる塵が覆う
「・・・」
ここでもやることは同じ

「曙光的に言えば落ちてるお金は拾った方が得だからね」

「水も滴るイイ男の証明ができてなによりの天気模様」
「……業は、こんなもんか。
　一雨降られたら一日豪遊できるっちゃできるか」

「もうバッチリ合ってますよ先生っ。
　記憶が戻ってこられましたか？」

買い物は成功だ。

「うーん……」
「そうじゃん、雨が降っているということは……星が見えない！」
「せ、せっかく地下を抜けてきたのに……」
今更気付いた様子。そもそも雨が降っていなくても見えない可能性だってあるのに。

天を仰ぐ。手を伸ばす。
この恵みに感謝して、
再び祈る。

「おお。曙光であったお嬢ちゃん。
　ほんとに来たのかァ」

「もてなしって程出来ることもないが
　静かな睡眠環境なら任せとけ。
　今日は病床についてる患者も居ないしな」

「こんばんは、梟首会の皆さん。
　生憎のお天気ですが、如何お過ごしでしょうか？」

「……この雨で種も芽吹けば良いのに。」

濡れた端から纏わりつく塵に顔をしかめた。

「相合傘♡するなら今ですよ♡」

「うわ出た」

「覚えてくれてて嬉しいで！私はガチ観光に来ただけやで」
「雨降ったのはここかぁ、勝負挑むのと雨に降られるの、
どっちがええんやろうね」

「俺が知っている限りの医者が集まってる」
「無意識に利の有る方に足が向いたりするか」
「或いは今日はここで医師会があるかのどっちかだろうな…」

「あっ、METROで死にたがってた刃の方だ」
「今日はここで闘争かぁ」

「あ～～そう！診療所ってシャワーある？」
「無かったらマジで朝風呂浴びなきゃならん」

ノリで生きているので、雨におもっくそ濡れている。

「俺が知っている限り一番の患者も来たから手術かも」

「よういらっしゃい。
　こんだけ色んなやつが空模様気にしてるってのも
　なかなか面白い光景だし、生憎ってほどのもんじゃないさ」

のんきな白衣の男である。

「雨は……ここだったんだ」

自分は乗れなかったけれど

「そうか……良かった。
　あまり此処に患者はいないと思うが、一応見て回ろうか」

ビルをうろついている。

「こんなとこで医師会起こすな！」
「医学薬学齧ってるだけの男が一目散に逃げ出すぜ、マジで」

「見知った顔も増えたけど……なんか、医者も増えたね？」

「医師会？え、そんなんあるの？」

「ああ。そっちのお姉さんも医者かあ…！
　くそ、そろそろ診療所に引っ込む時間でさえなけりゃ
　もっと話したいとこだったな……」

「濡れると風邪ひくやん…屋根ある所に逃げるで」

「ハハハ。違う場所での話をされるとお恥ずかしいものです。
　オレは此処ではそうそう羽目を外したりしませんよ。」

「剣ちゃん……あまり出歩かない方が良いぞ」

ラセン君から相合傘されたら多分無抵抗。

降り注いでくる雨を濡れるのもお構いなしに見上げている。

「ヒトが変わったような喋り方をするねぇ……」

「来ちゃった、もっと喜んで」

「やった、ゆっくり寝れそう」
「…先生は、診療所では寝ないんだ？」

「はいっ。見て回りましょう。
　同業のお方が何人か見えます」

隣を歩く。

雨に気づくと、屋根の下へ

「6割がた気まぐれで水になるおんぼろシャワーとちびた石鹸でよけりゃあ
　幾らでも貸せるがね」

湯の割合のほうが少ない。

「何……ほかの医者……？」
「思い出せない……何も……」

「多分初めましてだな…」

「医学薬学齧った人らできればあの頭に包丁の刺さったイカれが」
「ぐっすり90年くらい寝たままになる強めのお薬の処方をお願いしたいな」

「あー……雨」

「どこか、雨宿りしないとな」

「お」
「おお！」
「ッしゃあ！！！」
降ってきた雨。ガッツポーズを勢いよく決めれば小躍りしていた。

「剣が……刺さってるように見えるが……」

疲れ目か…幻覚か…？
一先ず目頭を揉んだ。

「雨に浴びれたのはいいけど、
　曙光に逃げとかなかったツケが巡り巡ってくる……」

「ああいいよ、男も女もシャワーも気まぐれで構わねえ。
　毎日使うんだったら御免だけどさ」
「着替えも持ってこねえとな、そのうち……」

「おやおや、医者から外出の自由を禁じられてしまうと弱い。
　まあご心配無く。先生の心配する様なことはほとんど起こり得ますよ。」

「もしかして今なら風邪ひき放題か？」

医療系が多そう。

「……確かにこのまま雨に濡れるのも不味いな」
「屋根の下に行くか」

「うーむ辛気臭い場所だ。
　河岸を変えるならやっぱり先に地下だったな～」

明らかに部外者である。

「華って土壌に栄養がないと育たないんだな」

「医学薬学齧ってるからこそ、
　頭に包丁の刺さったイカれのことをあまり認識したくないんだよ」

「ああ……こちらは剣ちゃんです。
　剣ちゃん、挨拶出来る？　……
　……失礼、今日は機嫌が悪いようで……」

（ぶふっととある人物の様子を見て吹き出した）

「…」
「ここに戻ってきちまったな」
別のところ行くつもりが。

「ここは、なにがよくもえるのかな。たねかな。いしかな。」

何処ぞから流れ着いたよう。
業雨は、気に留めていない。

「風邪なら……この薬が効く……効いた……確か……」

「外科手術が必要なのは、あれを認識しないように脳を弄るか」
「見たくないものを見ないように目を摘出する俺らだったか……」

「剣ちゃんまだ黙ってるんだ……」

「先生が覚えていないなら、自分にとってもはじめまして。
　だって二人の認識はニコイチ♡ですから♡」

「ラセン・ユガミです。
　よろしくお願いします」

相合傘の中から顔を出す。

「はは」
「約束を覚えててくれてありがとよ。
　えらいぞぅ」

少女Evaの頭をわしわしわし～
子供にする手つきで撫でようとしている。遠慮は無い。

「俺はいちおう診療所の二階に寝床があるからなぁ。
　患者がいるときは隣に簡易ベッドを置いて泊まり込むけどな」

「剣ちゃんは意外とTPOを弁えるんだな。
　その頭はまだどうにか出来るのかもしれない」

「助からないと言ったが、まだ可能性はあるかもしれない」

「…もしかしてあれが破壊衝動マンか？」

剣ちゃんとかいう人を見てる。

どこからともなく現れた、──見目はまさしく貧相な餓鬼としか言いようのない──小柄、鼻歌ひとつ、其処いらの道端を歩いてゆく。
蹴飛ばした小石ひとつ、喧騒乏しい細道へと吸い込まれてった。

「ふうん……」

辺りを見回しながらやって来た。
前来た時と変わってないな、なんて考えつつ。

「見ない顔も見知った顔も増えてきた……」
「うーん、なんだかんだ覚えているもんだな」

「いやはや……ジョンくん(@milktub)は少々私に対して辛辣でね。
　昔はあれだけ懐いていたのに、今は反抗期というやつですな。 」

「ええ、先生。まだまだ先生のところに掛かりっきりになるには早いですよ。」

「剣ちゃんはうちの∞0というバンドのメンバーです
　突然キャラ変したのでファンから手紙が殺到しました」

「楽流お嬢様」
「風邪など召されるとあなたが大好きな皆が悲しみますあっちに風邪とか持って帰って面倒くさいのでご自愛ください」

「えへへ」
「触り心地、いいでしょう」

子供にするような手つきにも抵抗はしなかった、さらりと髪が揺れる

「ふぅん、そうなんだ」
「こんな天気だよ、一緒に寝てあげてもいいからね」

「やっぱ風邪ひき放題や。
でも風邪ばっか引いたって学校休めるわけちゃうから
やっぱええわ。」

「破壊衝動マン、というのは人違いですな。
　僕はこうみえて普通の人ですよ。ホーホーホー……（親和目的梟笑）」

「ここが梟首会でよかったって、
　マジで初めて思ったぜ……」

万が一曙光かMETROだったら、
最低限保たれている秩序の栓が抜けてたってことだろ。

「あの刃の方、バンドメンバーだったんだ」
「確かにデスメタルとかやってそうだったな。」

「…………なんか」「あちこちで見た顔が……」

新しい顔ぶれがあると思っていたけれど、世界は思ったよりも狭いか。

「此処がお天道様が救いを差し伸べた地ってか。しっかし、ノートコイツに水は弱点だ。」

ノートもう随分と前に水浸しになったことがあるかを語るようにに端がひだになっているが濡れないようにと隠す。

「私は嫌いだかないんだがね、この天気は… むしろ落ち着くまである。」

（そこらにある壁をバンバン叩いてゲラ笑いしている）