「おっ、ドクの兄さん」
「さっそくモテ期来てるじゃん」

一緒に寝るなんてかなり上位の好意の表現だろう。

「ば、バンド……？　あれは冗談ではなかったんですね……。
　いやあ、ワシには荷が重いですじゃナースさん……」

「いやー……秩序とか全然守ってますよハイ。
　ちょっと気が向いて様子見に来ただけですんで。
　すぐすみますんで……」

イマジナリ監視員と何やら喋ってる。媚びは売るほどあるんだなこれが。

「おー。はじめましてだよ、俺の認識でも。
　ドクっていう、ここいらで診療所をしてる医者だ。
　そっちのお嬢さんは…看護師か」

赤毛の女性医師、それからその隣に付き従う娘へ
順繰りに視線をやっていく。

「また会ったときに良けりゃあ、色々話をさせてくれ。
　医師会…ってほど大したもんにはならないけど
　出来るだけ協力体制てのがとれると嬉しいからさ」

「長年の信頼や師事の裏返しで師匠にきつく当たる弟子の椅子を俺に用意しないで」
「切れ者の師匠面してるけど多分頭が切れるってその意味じゃないから」

「医者……」「噂には聞いてたけど……」

「おうご自愛はするけど言葉に面倒くさオーラが出てた気がするで」

周りに迷惑かかるからね。

「急に人が湧いてくるじゃねえか」
急にキャラが濃くなるじゃねえか。
「ま、なんでもいいや」
「がっぽがっぽ、偶発的に手に入れたわけだし」
「いー気分で寝れそうだぜ」

がははと大きな声で機嫌よく笑いながら。さて今日はどこで寝るかと寝床を探し始めるか。

「大丈夫ですよ、
　ドラムスティックになって暴れるだけの簡単なお仕事です。
　スキマ時間に働けて高時給、先生の診察も受けられますっ」

「この医者の診療所に運悪く捕まって、
　色々手伝いをさせられている、医学薬学齧り男たる俺の名はチュエ」

「あ～ほんとに、曙光に比べて、
　ここじゃちっとも色男らしくない肩書しか言えん」

「すいません女医さんっていません？ここ」

「お医者モテてるじゃん、良かったな？」

｢雨だ雨だーっ！｣
どたどた…
蛇っぽい割には騒がしいかも。

｢あー…コレもう業じゃねえ普通の雨か…｣

「どした兄ちゃん、急に壁を叩き始めて…熱出したか？」

「ジャンくんは照れ屋なのは変わらないなあ……
　なのに、心を閉ざしてしまったのは……　……やはりあの事件から、か。
　……最後の仕事として、彼の心を導いてやらねばな……」

「へえ、ここじゃ医者は信頼されてるんだ」

「髪の手触りがいいってのは、健康な証拠だ。
　これからも励むように」

偉そう。
うんうん、と満足げに手を降ろした。

「馬鹿いうんじゃありません。
　そういう科白は、大人になって大切にされたい人に言いな。
　──チュエも悪ノリするんじゃねえ…！モテとかじゃないだろこれは」

「……この種子、こんなに価値があったのか」

「ほな普通の人かぁ…ホンマかぁ？」

普通ってなんだろう。

「医者先生は非モテ卒業か〜？！」
「良かったじゃねえか。春だぜ春。いや〜希望に溢れてんね」
カスみたいなヤジも飛ばした。

「診療所……どうやらキミはまともな医者らしい……」

ドクと名乗る男に会釈する。

「僕はレッド。Rでも何でも良い。
　真っ当な医師に対して意見交換できる気はあまりしないが、力添えを貰えるならこちらもお願いしたいところだ…」

「お兄さん、診療所の手伝いしてるんだ？」
「……、なんで？」

「価値と……負荷」「移動をするのも、一苦労」

「愉快なもんが見れたからな、雨以上についてる。」

「人が増えたねえ。しっかし私は神様でも仏ではないからなんも恵んでやれないどころか奪う側だがな。」

悪人気取りを、してみる

「高時給……いやあ、お金はいりませんよ。
　金それこそが欲望を加速させる業なのだからなァですから……」

「はいっ。レッド・ダイヤ先生の専属ナースをしております
　ラセン・ユガミです。」

「医師会！
　協力体制だなんて新鮮ですね、先生。
　その時は自分もお供しますよ」

「雨も見れたしMETROに戻ろうかな」
「いやもうしばらくこっちでいいか……」

俺が手伝いに捕まえました顔をする。

「さって。これ以上濡れんのも嫌だし
　引っ込むとするか」

「チュエとお嬢さんは、こっちな。診療所への道案内するから」

「皆、あんまり体濡らして風邪ひいたりするんじゃないぞぉ。
　仕事が増えるからな」

「そういえばあの自己紹介に集中しすぎて
みんなの名前覚えるの忘れたねん、野蛮人ワイルドガイしか記憶にない…。
チュエにいちゃんよろしくな～」

「女医は……僕…かな？」

自信無くした。

「俺にとって大事な人を亡くしたであろう事件を綺麗に捏造した挙句」
「今言うことによって最後全てを伝えられないままの師との別れを匂わすのやめてね」
「俺、形見の包丁頭に刺してやってく自信ないから」

「よくもえるね。」

外で拾った種子とかを燃やしている。
業雨でも、焼却は滞りなく。

「いやま、冷やかしに来るだけなのも気が引けるしね」
「厭々ではないよ、一応」

「あ～そっか、お医者サマ捕まえただけで、
　診療所はまだ見てねえか……は～い今見に行きます」

「剣ちゃんちょっと今素が出てません？」

「お邪魔するぞっと…おお降り注いでるな」

「そっちのもヤジるんじゃねえ。
　くっそ。次会ったらちゃんと名告れよ！
　抗議する先の名前を知らないのは恰好つかねえ…！」

これは気遣わない仲の男sixpenceに向けた文句。
この先もヤジに対抗する必要性があることを感じているのだ。

「ふあ～ぁ……同業多いな」

* 伸び一つ。欠伸一つ。

「やっぱ種はここで捌くのがいーわ。
　酒買うかー…」

道の端、ふと足止めて、時折声聞こえる方に顔ごと目線遣る。
雨だ何だというのが薄っぺらい己の服汚すのは、全く気にしちゃなかった。

「……」
「何処にでも居るもんだなァ」

人間共。
懐の温そうな、を内心で付け足しておく。

「ドクさんとチュエさんは
　ユガミたちのような関係性でしょうか。
　いってらっしゃい」

「おお、よかった、女医さんはいて。
　危うくこの地における私の存在価値を全て失うところだった」

「私を襲っても美味くないで、ガチマジ」

「あ、黒髪の寿司大好き犬兄ちゃんや」

「自分だけが得してやろうと思って誰にも言わずに来たのに」
「皆考えている事は同じだったな。いい性格してる」

「ちぇ、仕方ないな」
「一緒に寝るのは、今度にするよ」
「僕が大人だって、わかってからね」

そう言いつつ診療所へついて行くでしょう。
残る皆を軽く振り返り、ベ、と可愛く舌を出しておいた

「そいや名乗っておくか、ストレイトってもんだ。」

（ぶふぉっと吹き出して見送った）

「然し──数年後、彼の頭部には立派な剣が抱かれていた。
　亡き師の後を埋めようとする彼の活躍は、医療界を震撼させる。
　後に彼は、こう呼ばれることになる。剣医師ジェイク──と。
　数年後に死ぬまでの、余りにも短い、天才の活躍だった。」

「ラセン君か…あのお兄さんも…」

見送りつつ。

(ノートの縁に、人々の名前を書き連ねてる。 その字は本人にすら読めるかどうか怪しいが。)

「…………」

ただ、じっとしている

「オイラはいつも素でヤンスよ……ケヒヒ……」

「存在価値？
　ユガミの格好良くて優しくて腕も良くて赤髪が素敵な女医さん♡に
　何か御用でしょうか」

「さて、今日の愉快な世界は…。うん、なるほどね中に入っておくか」

「剣ちゃんは……こちらにいた方が比較的マシなのかもしれないな……」

辺りを見たり、人を見たり。

「腕は良くないよ」

本当にそう。

「レッド先生にユガミ嬢な」

名乗りを受ける男は嬉し気だ。
同業者というのはこういう時世だからこそ心強い。

「また会えないか、あんたらの事は往診中にでも探すとするさ。
　そん時は宜しくな！」

「わたしもなのっとこ、棺最院 楽流カンサイイン ラルルや。
めんどくさいからお嬢様口調は省略や」

「結構頑張って生きてる俺の寿命をあらすじで処理しないで」

「こちらにいた方が比較的俺が割を食ってるから」
「早めに鼠の穴倉に連れ帰ってドクター」

「抗議されるなら名前言うのなんぞ余計やだねーーッ」

馬鹿たれのことを言い残していった。
男にしちゃ細っこい腕を掲げながら。

「俺は診療所見たら一旦曙光に帰るつもりだけどな……」

「女医やナースのお嬢さん方と知り合えたのは光栄だし、
　仲睦まじいのは大変よろしいことだけど、
　一緒にされるとなんか若干語弊が……」
「いやまあ全然いいけど　守備範囲内」

あっちもこっちも医師会はインモラルであった。

品定めするよな視線、行き交う人々の間隙をすり抜けてゆく。
矮躯も、するりと。人波の最中。

「え？何？両手に華？」

何が？多分早々に監視員とかに連れて行ってもらったほうがいいやつだ。

「いや何。ほら、華のなき地に華があると我慢しておられんし？
　必要じゃないですか、念入りなメディカルチェックとか」

「よぉーし、んじゃあ、行くぞ行くぞー」

シャワーを浴びたら気儘に出歩いてもいいし
一眠りしたら好きに振舞ってもらってもいいのだ。

去る者は追わないが
珍しく健康状態で診療所に足を運んでくれた客人に
うっすい茶を出すなどしてもてなす男はいつもより笑顔が多かったことだろう。

「ま、覚えておこうかね。」

「僕に剣ちゃんをどうこうできる権利も資格も無い……」

「僕はオペ以外では無力だ……」

※オペでも

「ジェイ君は全く……やれやれ。先生に迷惑をかけてはいけないよ？
　オレになら、幾らでも掛けてくれてもいいけどね──いや、なんでもないさ。」

「はいっ。
　またお会いした時はよろしくお願いします。
　先生は謙遜しているだけで本当に素晴らしいんですよ、
　ユガミの命を奇跡的に救ってくださったんですから……♡」

普段の腕には言及していない。

「こちらこそ、知り合えて光栄ですっ」

「黒髪の寿司大好き犬兄ちゃんだぞー。
オレはエーヴェルトっていう名前があるんだが…」

「ここは落ち着いている印象だな……？」

「眼鏡紳士の方は特殊な嗜好を持っているのかな」

「ラセン君は確かにルックスは良いが、その他の面においてやや難がある……
　そこを受け入れてやってほしい」

「早く処置して。薬学か医学の一番強いやつで」
「このままだと刃物が頭に刺さった奴が家系図のどこかに割り込んで来そうになってる」

このままだと剣ちゃんとドクターと四角関係になる。
なんなの？　実は生まれたてでメトロで初めて見た時に刷り込みでも行われた？

* 耳に入るヒトの会話に。
* いくらか表情の険が取れる。

「…ハァ」
「やっぱここのが性に合うな」

* この天気じゃ煙草も湿気るか。
* やめておこう。

「…塵芥を集めて、集めて。集める。
　何かこれは意味がある行為か、まあなにしたって意味はないか」
今夜も宝の山を漁る。酒は出てこない。
「酒がある場所でも探そうかしらね」

「オペでもいつもどんな時も
　ダイヤ先生は無敵で最強ですっ」

「あーん♡また先生に褒められちゃいました♡♡
　華のDEATHメディカルチェックなら
　実施しておりますよ」

（ここなら寿司を…でも監視の目か…。否、背に腹は代えられぬ！）
「いくぞ～」
寿司を食べに行った。

「なんや名前あるんかい！
はよいうてや～犬兄ちゃんで覚えるところやったで」

「…………」

骨牌を使用し、別の場へ移動した。

「たねは、よくもえる。」

ひとり、焼却が捗っている。

「いやこの滅びゆく世界において生物学的にめちゃくちゃ正常嗜好なのだが……？
　正常紳士ですよ私ってば。優良物件……
　あれ私これから解剖とかされる？
　猶予とかない感じ？始末されるか諦めるかの二択しかないですか？
　そんな邪魔な虫みたいな……」

いや、全くその通りなのだろうけど。

「あるに決まっているだろう！」
手にはシャリ。あれ？寿司は？
「エーヴェとか呼ばれていたぞ」
かつてはね。

「こらっジャス君。教えただろう。医療は急いてはいけない……
　じっくりと患者に付き合っていくことが必要なんだってね。」

「ねえ、誰か酒がありそうな場所しらない？
　…なんて聞いてもこんなご時世じゃ酒も高級品かね…。」
周りを見渡してすこし大き目の声で言うがきっと雑踏と人の波に掻き消えるだろう。

「紳士って自ら紳士ですっていうのか…？？
オレは違うぞ。ノット紳士だ」

「酒……酒はなかったな。今じゃかなりお高いのやもしれんな」

「医者がいるところには高濃度の酒置いてるんじゃない？」

「酒なら、METROの方に行けば飲んでいる者がいましたよ。
　間違いないです。オレがその酒瓶を割ったからね……
　……アレなんで割ったんだ……？」

「はあ、やっぱりそうかい。
　そこのお兄さん、結構身なりがいいね。
　どこかのいいとこの坊ちゃんかい？…まあありがとうね」
あなた（エーヴェルトさん）へ手を振る。

「酒はァー…」
「ここじゃないトコの方が呑むにゃ早ぇわ」

「どうしても飲みたいなら三つ隣の地区だね。
　今時間開いてっけかな」

「METROか。そっちに行く価値はありそうだねえ…
　エッ　なんで割ったのよ」

「紳士殿は何か健康面で不安があるのかい？
　自覚症状が無いなら、末期かもしれない。
　オペを視野に入れる必要があるのかもしれない……残念ではあるが……」

「…流石に酒はねぇが、タバコ擬きコレなら…」と見せる。

絶対に代替品にはならないと思うが…

「医療用のはやらねぇ」

* 腰のポーチを庇った。

「なんで割ったんだろ……
　怖い話もあるものですな、ハハハ。ハハハハハハハ」

「元、だなあ。今じゃ大したことないヤツになってしまった。
お、貴族じゃないぞ」
酒欲しいよなあと思うのだった。

「一番死に向かって急いでいるやつに言われたな」

「どうしてもってわけじゃないけど…まあ情報としては頂いておくわ。
　こーんなご時世でも答えてくれるお人よしさんはいるのね。ありがたいわ」

「お酒も煙草も高級品やからねぇ。
お兄さんも煙草は欲しいわぁ」