「ふぅん」

「ほんまに花売っとるんか。大層なことやなあ」
表情は変わらない。さほどの・・・・未練は無い。そんな様子。

少女たちのやり取りを傍から聴き。
うんうんと頷いている。不審な大人である。

「花は」「もうしばらく見てないな」
売れない種は、傍の、鳥の餌。

＊あの種は大きさがあって＊
＊あれなら食べられそうだなと思っています＊
＊育てるという考えなどありやしません＊

「そう、なんですね…」
死ぬ前に。その言葉を聞いてひどく落ち込んだ表情をする。

「私のお母さんもお花を育てていたんです。私は上手じゃないから…うまく咲かなかったり、咲いてもすぐに萎れたりしちゃったけれど…」

でも……

「お姉さんならきっと、綺麗なお花を咲かせられそうな気がします」

「オハナ〜♪」

ハムっと食べたいお花

曙光の方から、こどもが一匹流れてきます。
いつもならそのまま通り過ぎて火の側に行くのですが
今日は何やら話し込んでいる人々がいるようで、脚を止めました。

「ああ、そんなに気にしないで。
　昔のことだし。」

　と言いつつも、恐らくはヒマワリに執着していることは分かるかもしれません。

「貴女も、お花を育てたいと思っているなら。
　きっと綺麗なお花を咲かせられると思うよ。」

「……私はヒノワ。
　貴女の名前は？」

小さなねずみは、じっとしている。
ここにいる間は、食べ物や水を探しているか、じっと壁際にいる姿しか見ることはないだろう。

じっと、聞き耳を立てている。

「ヒマリです。
お姉さんが咲かせたいお花と同じ、お名前です」

名前を告げられ、名前を訊かれ。ヒマリは小さくお辞儀する。

「ありがとうございます、ヒノワお姉さん。
あの……失礼だったら申し訳ないんですけれど」
「なんだか私たち……似てる気がしませんか？」

なんて、微笑んでみせた。

「…お。かけっこしてたちびすけじゃねェか。
　おまえもこっちのほうまで来るんだなァ」

白っぽいこどもC4R0の姿を見て留めた。

焦げ切った煙草を地面に押し付け、訪れる人々を横目に見やる。
花売り、種。愛らしいものだね。暗い世界に咲く一輪。

生欠伸繰り返し瞬く。見た影も、そうでない者も平等に紫黒に映されていた。

ちびすけで、かけっこ。
ぐるりを見回した時に雨音もしのもいないのを見て
自分のことなのだと気づいたようなこどもがいたでしょう。
こちらに声をかけてくる人というのは、そう多くないですから。

目の前のあなたがお医者さんであったことを思い出したこどもは
ごそごそと分厚い本を取り出して近づいてきます。

＊集めたがらくたに火を付けます＊
＊ありったけの業が降り積もるのです＊

クズ山から出てきた種を　ブスッと地面のひび割れに刺してみる

コレで育つ？

「ほーら民、餌だぞー」

金具をどさっと落とす。

「ヒマリ、素敵な名前だね。」

　お辞儀をされれば、こちらもよろしくとお辞儀をすることでしょう。

「ふふふ、明確な違いと言ったら髪色と目の色くらいかな？
　似てるところと言えば、お花が好きなところとか。」

「カチカチだ〜それ食べれないです」

ノット餌。

「んぉ。なんだなんだ」

何気なく声を漏らし、ついでにここに来るまでに怪我でもないか──
なんて観察していた男は。
近づく子供の”ごそごそ”に少々目をぱちくり、何事かと姿勢を正す。

「何に使うんだか」
「伸ばした線路の先に楽園でもあると信じてたりする？」

「あの子は可食かどうかで考えてるんだ……。」

「おつまみに最適ですよね、ヒマワリの種」

「偉いね～」
「食べれる物と食べられない物の区別がついてる」
「次持って来るときは柔らかめの金具持って来るよ」

「おつまみ」
＊ならヒマワリ？の種は食べられるんだ、と＊
＊お腹が空いて仕方ない時のために覚えておきましょう＊

「ヒマワリの種美味しいよね」
「とても美味しいから誰かが他の人に取れらないように大事に埋めてるの見たら」
「内緒でほじくって食べてみるといいよ」

怪我は一つもありません。存外丈夫な体をしています。
観察するなら黒く染まった手足の先がひとと比べて堅そうなことも
ある程度は分かるのかもしれませんね。

その手でごそごそと取り出した本を開いて

『わたし』『行く』『何処でも』『医者』『も？』

ひとつひとつ指さしで話をします。
声が出せませんから、これがこどもの言葉代わりでした。

カカカカカカ早歩きヒール音

「…………ふう。ここまで来れば追っかけてこれまいよ～(*ΦωΦ)」

手のひらの中で貴石を弄びつつ、伸び。
なにか……良くないことをしてきたなこのバニーは……

「そう、そうです……！お花について、いっぱいお話できそうだから……
あの、あの……なので、その……ヒノワお姉さん。よかったらお友達になりませんか？」
わた……わた……

「確かに食べられるけどさ……。」

　せめて種を増やしてからにしてほしい。

「ひまわりの種食べてる人いる？」
「煎って引けばコーヒーも作れるよ」

「…おー！」

何事かと見守る面を破顔させる。

「ちびすけはそーやって話すんだな。賢い賢い」

にこにこと笑った大人は本の文面に目を落とし。

「そ。患者がいないか探しに。
　あるいは患者が出た場合頼れる先はあるぞーって知らせに
　こっちにも足を運んでみたってわけ」

『わたし』『行く』『何処でも』『医者』『だから』
あなたの真似をして、医者の荒れた指先も本の文字を軽くなぞる。

「うん、こちらこそ。
　ヒマリがお友達になってくれるのなら、とても嬉しい。」

　麦わら帽子の下から覗くヒノワの表情は、とても嬉し気でした。

「……今日は茶会よろしく穏やかですなあ」
酒を注ぐ音。

賢いと褒められれば、少し得意げな顔。
心なしか姿勢も四つ脚のままぴんとしているかもしれません。

『はい』『わたし』『話せる』

もちろん言葉のままでも十分に伝わっていたのですが
ちいさな自分と同じように指をさせる場所まで指を下げてくれて
なぞった文字、覚えていてくれたことがうれしくて。

『医者』『大変』『でも』『すごい』

あなたの文が出来上がるころには頬をゆるめているでしょう。

「柔らかめの金具！」

食べれるかな　美味しいかな
嬉しいので待ちます　

「やっぱり」「食べられるんだ」
＊増やすという考え方＊
＊子鼠はそんなこと知りもしません＊

「……なんだ。地の獄だって、前向きなやりとりってのが結構あるんだな」

目を細めて見てたみたい、そういうのを。

足音。
腕やら顔に飛んだ血を拭いながらぶらぶら戻ってきた。

ぺろ……。うーん、腹が減る味。

『なぁに』　『これ』　『なんかすごそう』

すこし高い音が響きました。
音の主はネズミの一匹の様子。
骨牌を掲げて目を輝かせていました。

「ちょっとメトロの方々ーこんなかわいい無垢な子が飢えてるのに」
「何も施しとかないのー？このままだと柔らかい金属与えちゃうよー？」

「そうそう、明日をも知れない毎日なんだから」
「今食べられる物は今食べておかないと」

「………。

　またネズミが増えた。」

「いやいや。そんなに凄かないさ。
　この街のガキんちょどもに散々不信がられて診察拒否までされてんだぞォ」

へ、っと笑うが自嘲の色も然程ない。

「でもそー言ってくれんのは嬉しいな。
　やさしい子だよお前は。ありがとよ」

あなたが小さな指で伝えてくれた。
その事に男はたいそう機嫌をよくして
こどもの頭をわしわし撫でんとしている。無許可。ノンデリ。

血の香り。スン、と鼻を鳴らして面に触れる。

「ンだョ〜また誰か腹ァ空かしてンのカ」

ま、茶飯事。浮浪者共みたく動けなくなってるヤツらはよく転がってるので。

「肉要るカ〜？」

「っぱ鼠帝国なンだヮ」

カカ、と笑った。
あ、鉄臭い？ゴメンね〜。

「骨牌」「あんまり見せない方が」「いいかも」
＊業のあるところ、悪意も集まるもので＊

ねずみ、やはり増えるものなんだな。
見知らぬ顔であったり、見知っていたり覚えきれるか。
こんな場であるから覚えたり覚えなかったりしている。

「麗しいお嬢さんにならいくらでも施すんだけどねこちとら」

「あっ。それいいモンなんだぞ～。
　大事にしまっとけしまっとけ」

骨牌をかざす鼠の子供に。あぶなっかしい…！とちょっとハラハラ。

「俺もゲーム相克で負けたらいくらでも食わせてやるけどさ」

「哀れネズミちゃんたちはこんなに腹ぺこ……可哀想に……」
「達磨の君はなんかいいご飯にありつけてそうだね」

何をやったらそんなに血濡れになるんだろね……いやここで血濡れになる理由なんてひとつくらいだけど（強盗）

「あ、カモいる」

骨牌を掲げる鼠を見て笑う。

「相克って言った？！」
ギャンブル脳兎　反応

『……』
施しと言っても狗は今煙草しか持たぬ。
そういうのは他の者にお任せだ。

血の香り纏う者にはゆらと手を揺らし「いいよ」の仕草。
昨日も煙草であった事だが、別に嫌いって訳じゃない。

「カ〜黄金虫の連中ァ懐が狭ェなァ。持ってるヤツがわけりゃいーのニ」

カチカチの干し肉しか手持ちがない。
が、欲しいならやろう。塩気はよくきいている。

『いいもの』　『みせないもの』　『大事』　『危ない？』
むむむ、鼠の子は顔をしかめました。
こんなに頑張ったのに、ほめてもらえるものではなさそうです。

「虫」
＊今日も運が良いらしい＊
＊がらくたの隙間で見つけました＊
＊躊躇いなく、パクっと＊

生憎腹の足しになるような持ち合わせはない。
まあ、空腹は健康の敵だ。そんな自分に苦々しい笑みも浮かぶんだが。

「まあ、実際高値のものはあまり見せびらかさないほうがいいね。
　相克っていう業を取り立てる手段があるから。」

「柔らかい金具とお肉はどっちが美味しいですかね〜
　ぶたのちょうづめより美味しゅうものはあるのですかね〜」

のほほん

「…うぉっ」

虫を食べるところを見てしまった。
焼いた虫ならまだ、まだ許容範囲なんだが。
生……。

『仕方がない』
『ここの』『子』『疑い深い』『から』

あなたも分かっていて来ているでしょう。
でなければ、もう少し暗い顔をしたでしょうから。

『そう』『だろうか』『でも』『嬉しい』

少し考えて言葉を選びました。
本当はもう少しこどもらしい言葉にしたかったですが
紙の上に書かれている以外のものは使えないので
どうしても硬くなってしまうのでした。

それでも撫でられると、やんわりと笑うのでしょう。

「？」
＊あらゆるものが奪い奪われる対象＊
＊見せびらかさないのは大原則、と学んでいます＊

「カカッ。いーモンはいい子ちゃんにして仕舞っときナ。命タマごと毟られても知らね〜ゾ」

「ケチっていうな！有効な使い方がわかっていると言え！
　そうだからこれだけゼータクに生きていられるのだ」

「さっきのパリパリは中々の美味しゅうでした」

カビたクッキーやりおるね

『？』

逆に、隠せとは教えて来られなかった鼠の子。
洞窟で鳴くカナリアのように、良く鳴くのが役割ですから。

「金具ァ燃やしゃ業になンだろ。美味イ飯と引き換えられんゼ」

ほれ、と硬い干し肉をやった。

「ァ〜？事実だろ〜ガ。
ゼイタク出来るくれ〜ヨユーがあるヤツァ倹約なんてしね〜だロ」

するのか？それが普通なのか？
その日暮らしの男には良く分からん。

と、た、た。
と帰ってきた。
手には大きめの肉まんらしきもの。

「……まあ、ここならマシなほうではあるけどね。
　奥まったところでは、本当に隠しておいたほうがいいよ、METROでは。」

「冬に向けてせっせと蓄えてる虫さんの涙ぐましい努力だよ」
「飢えてる人を前に食う肉が一番美味しいって鼠さんは一生知れないで可哀そうだね」

ガジガジとハチャメチャに硬い干し肉を齧る。
無くなれば今度はなんかのゴツい骨。
歯の疼きは抑えられる気もする。

「柔らかい金具はそのまま食べる無い
　美味しゅうご飯と交換…！」

コレが　この世の　良い事(トレード)！

硬い干し肉にがぎぎと噛み付く

…ぎ
…ぎぎ…？


…ぺろ　　　………！！(うまぁ！)

「まー、急に言われても胡散臭いよなァてのは分かったからな。
　定期的にここいらにも通うのが決定した」

にかっと笑ってこの話は為舞い。
わしわしぐりぐり。
暫しあなたを撫でてから、満足げに手も離す。

「ドクター、ドク先生の保証付きだ。胸張っとけ張っとけ」
「んで、ちびすけのほうは、なんで方々歩き回ってンだ？
　何か探してんのか？」

「飢えてるヤツ前にして食ってても落ち着かね〜だロ……盗られちまうゼ」

最悪腕ごと。強盗も派手なのがMETRO流。

「死んでるヤツならイイ」

とらないから。

『奥』　『いける？』

ここ以外をあまり知らないので、きょろきょろと。

「メトロの雑食家は……いつ見てもすごいね……」
曙光住みバニー、引き気味

硬い干し肉噛みきれないので
永遠舐めて解している

ぺろ…はむ…ぺろ…

「奥は行かない方が良いよ」
「塵芥以下の掃き溜めだから」

肉まんを食べつつ。
あんなとこに自主的に向かうのはそこに寝床があるやつか、余程自信のあるやつか、死にたがり奪われたがりくらいだろう。

「まあ実際倹約などまるでしてないのだが。
　何の利益にもならん人間に施す義理がないだけで」

それをケチって言うんじゃないだろうか……

「はあ…、迷子になりそうだ」

覚束ない足取りで彷徨っている。

「盗れないようになってる・・・・・・・・・・・よ。曙光では」

『方法』は、いくらでもある。強盗への対処も金や業で買える曙光流。

「でもそういう飢えてる人の前で『満腹でゴミ箱に捨てる』のが一番美味しいかな」

「奥なァ。土地勘あるンならいーんじゃネ」
「それかオレみたいな土地勘あるヤツを雇うかだナ」

肩を竦めた。一人で行くのは多分自殺願望者。

「あっちの方は美味しい無いです　面白くも無いですねぇ」

干し肉無限に美味しいなって思いながら
奥の方を思い出すのですね

舐めてるなあ。
食べれそうならいっか……。

「黄金虫の連中ァ話が合うか合わんカ分かんねェや」

合う時もあるが、合わん時はとことんダメ。今は多分後者だ。

「此処ァMETROだゼ。METROの法で話しナ」
「フーン。それなら別に良いんじゃネ」

ゴミ箱漁りゃありつけるんだもん。いいじゃん。ケロッとしている。

『頑張る』『して』『応援してる』

以前に騙された経験があるこどもともなれば
多少はそうなってしまうものですから仕方ありません。
撫でられている間はやはり大人しくしていたでしょう。
離れれば、頭を下げてお礼をしました。

『張る』『胸』
『わたし』『集める』『業』『たくさん』

どうやらこどもには叶えたいことと
その為に東奔西走を厭わない性質もあるようです。

『おいしい』『面白い』『ない』
　
……

『残念』

「奥、なァ……」

そこにこそ医師を必要とする者は多いんじゃあないか。
そうも思っている。

「面白いことなら……。
　変な人は結構いるよ、見てて面白い部類の。」

✌✌

「METROを感じて〜ならオススメかもナ！命の保証もありませんケド」

毟られもせず帰ってこれたら一人前の鼠かもです。

……拾った骨牌をジーとみて考えていました。
困った顔です。