「数ミリ単位の希望を見捨てずに治療してくれるなんて
　その心が勇敢で素敵だと思います。」

「たとえ処方薬を間違えたとしても」

「形だけでも手足があれば、
　ある程度の不自由を回避できるからね。」

「腕がない者は既に数名いるはずだ。
　そして、切除が必要かもしれない者も」

「生きている限り望み続けちまうこともまた
　この世界にあっちゃ、業だなァ……」
「うんうん。殺すからな。死のうなァ……」

「逃げるは恥だが役に立つ」「生き伸びれば明日がある～」

適当な鼻歌、入り交じり。
コレを口にしてた奴はどうなったっけな。あぁ、もう見なくなってたか。

「一抹の希望を見出し、救いの手を差し伸べる。
　心意気には、夢があるのかもしれません……。
　不思議とあたしには自分の身体を大切にしようという気持ちしか湧いてきませんが」

「両腕ない奴も知ってるぞ。手足がなくて何ができるんだか…」

「手足が無いと大変だからなぁ…」

両手足が義足なので良く分かるとも。その辛さ。

「手足がなくても、
　這って動くことは出来るからね。」

「手足がないぐらい大したことはねえ。
　大事な物は、残ってるだろ。そう、命だ。
　だから、死のうな……」

「外科的な処置に不安を抱くのは分かる。
　受けない勇気というのも一つの選択肢だ」

「とはいえ、世間知らずの子供の身を晒す以上、危険は承知の上で」
子供は何が現れても抗う術を持たないでしょう。
生きたいとは、思っているようですが。

「手足がねぇとこんなイカれた奴から距離を置く事も出来ねぇ」

「新鮮な手足があれば付けてあげられるかも知れません」

「地獄の様な拒否反応が出なければ、多少は動く様にもなるかも……」

多少なんだ。

「手足、ねえ」

自身の左手を見る。
長い袖に隠れて見えないその手は、欠損している。

「拒否反応出るくらいなら義手義足の方が良くねぇ…？」

移植は割と博打かも。

「今手っ取り早く調達できる新鮮な手足で良心がいたまねぇってなると……いらねぇな、手足は無くさないようにしよう」
ちらりと刃マンをみた、あの手足はいらないな、と心底思った。

「ご自身の体を大切にするのが
　もちろん何よりでございますよ。
　どんな選択だとしても、自分は患者サマの勇気を称えます。」

「でもここの人たちって、
　自分の身体を大切にするよりやりたいことやるし。」

「拒否反応を無くしたり軽くする為に
　日々研究をしている……していたのです。
　それには数をこなす事が大事なのです、さあ」

さあ？

「お？結構人がいるんだな」

「黒髪君……患者をモルモットのように言うのは感心しない」

「数をこなしたからといって、必ずしも成果が得られるとは限らない…」

「身体は資本とはよく聞くけど…」

何方にもまぁ理解は出来る。

「どこ行ってもゴミだらけに変わりねえ、と」

「お、ハローハロー」
「賑やかなのは良い事だよな」

新しく来た人へ挨拶。

「があああああッ　業がァァアアアアッ　オレの身体に……降り積もっちまうよォーーーーーーーーーーッ！！！！！！！！！！　ぐああああああああああああああッ！！！！！」

そろそろ廃材漁りでもこなすか。
立ち上がり、長い尾を揺らして歩いて行った。

業が降り積もる様子を眺めている。

「……」

ちらちら……新しい顔が見える度、怖い人じゃないかな……
と一瞥をくれてはいる。

「業への拒絶反応……やはり剣を取り除くべきなのか？」

「他者の体を心配しつつ
　肝心な本人は喫煙してる……みたいなパターンもありますね。
　わかりますよお。
　やりたいことをやり、刹那に生きるのもまた闇の青春ですから」

「畜生ォォォッ　洗っても取れねえ　擦っても取れねえ業！」
「どうしてこうなっちまったんだ！？気付いたらまた積もっちまってる！」
「何処だ……何処だよォ……清らかな存在は何処にいるんだよーーーーッッ」

「もちろん、モルモットなんかじゃなくてギブアンドテイクの関係ですとも」

ほんと賑やかな……いや騒々しいくらいだな？

小さなため息入り混じり、新たな顔には目線が向く。
此処はそういうのばかりだもの、ね。

なんの話題だろうな、と眺めている。

「あーん♡患者サマ死んじゃいます♡
　先生……。ユガミの心の剣も取り除いて、何処かへ連れ去って♡」

「そりゃあどこ行ってもドブ攫いだからなア
　それに人間の居場所なんざ寿司詰めだ、勝手に賑わうもんだろ」

「あそこ、オレをダシにイチャツイてねえか？
　殺してやる……」

「業が無いと何も出来ないよ」
「だからせっせと塵芥を集めるしかないんだ」

「仕事だって無いし」

「仕事の代わりに私事をやるってわけ。」

＊怖い人たちと変な人たち＊
＊METROは今日も曲者ばかり＊
＊だいたい爪弾きものばかりなのです＊

＊それを眺めながらがらくた拾い＊

「僕は心理学の知識はないから、
　その辺りは昨日いた別の先生に担当してもらうといいよ」

「ラセン君はなかなか複雑怪奇な精神構造をしているからね」

「色々知識人がいるんだな…」

「……こんな塵芥でも集めないとどうにもならないもんね。」

「集めて固めて骨牌にして焼く。
　こうして業が積もっていくわけ。」

　別に紙片でも良い。

「塵芥でも集めれば何かのかけらくらいにはなるし」
「そのかけらを集めれば紙片くらいにはなる」
「それを燃やして生活するしかないんだよ。俺らみたいなのは」

「夢を探すにしても、明日を生きなければいきませんから」

「芥集めて芥の純度を上げた先がコレ・・だろ？
　っは、やってられねえ」

ピン。骨牌を弾いた。焼いた所で三文。

『底に落ちた者同士。何も無いからね。』
かりかり。

「殺す時は……2人一緒にお願いします♡
　お墓にアイスの棒建ててくださあい♡」

「明日どころか今日生きれるか怪しい奴ばっかりだしな」
さっきもボコボコにされたしな、俺も誰かをボコボコにしてぇな

「明日を生きるのは、
　ここでは途方もなく大変なことだから。」

「塵積ってやつだな～」
「…ま、何もないよりゃマシだろ」

「骨牌は移動費にもなる。
　オペには欠かせないものだ」

「明日のことなんて考えてらんないよ」
「常に目先の事だけ」

「芥山」

片手にぐったりした人を引き摺りながら顔を出す。
「うーん、本日も賑わいがあって良いね」

「塵も集めて焼いていたらなんかちょっと
　食べられそうな感じもしますものね」

そうかな？

「また白衣が変な事してる……」
白衣への偏見が芽生える場所、METRO

「複雑怪奇ということは、多様な可能性がぎゅっと詰まって
　希望に満ちあふれているということ♡
　また先生に褒められちゃいました。」

「緊急オペの際は自分もお供しますよ。」

「塵はマジのマジで足しにならない……。」

「患者か…？」

「塵芥でも纏めればマイナスにはならないからね」

後は稀に見つかるモノを、と。
生きるには必然的に塵や灰に塗れるものだ。

「アイスの棒だとォ……」
「クソ……地味に手に入れるのが面倒くせえぜ……」

「芥集めて芥山つくりゃ、多少は生活もマシになるかもなア」

「新鮮な患者さんだね、ついさっき怪我したばかりの」
引きずっていた新鮮な患者をそっと置いた

おっ、金具だ。
燃やして業を大量に得た。

「お山の大将になるのなら、もっといいもので山を作りたいものだね。」

「剣ちゃんは何アイスが好きですか。
　先生と一緒に曙光で買ってきますよ」

あだ名つけてるね。

「金具の山の大将……？」

「怪我したてホヤホヤってか。
なんでそんなことに？」

「治療が必要だろうか。
　切除が必要なら…オペをする」

「オレはあの成金タワーの経済を回したくねェッ……！
　ドライアイスでいい」

「新鮮な患者サマお待ちィ！
　じゃなかった」

「オペの準備を。メス」

「じゃあスクラップ山」

「新鮮な患者はもう本音なのよ。」

「怪我の理由なんてそう珍しくもなさそうだけどね」

「お医者サマの本領発揮なのかしら？」

隅の方、長いマフラーを邪魔そうに退けながら塵漁り。
空いたスペースを見つけ、幾つかの紙片をまとめて火を着けた。
鼻唄混じりに眺めている。

「……あ、きれいな金具。」

燃やしてしまおう。

『でもなんか、さっき死体埋めるとか言ってなかったかい？』
聞き間違いかもしれないけど。

「ドライアイスは棒付いてないじゃないですか。
　お墓建てられませんよ……。
　なら♡ユガミたちが生きればいいか♡かしこまりました。」

「……金具を燃やすっていうのも、中々おかしな話だよね。」

「金具すご」

業集め。

「棒ならあるぜ……
　お前らの骨という名前のなァァーーーーッ
　だから殺すぜ。了解したぜ」

「……」
『燃える金属なんじゃない？』
適当に。