「……」

適当な壁にもたれかかる。

「…………ダメだ」「私の……」
「負け……」
膝から崩れ落ちました。
『ん』から始まるものが思いつかなかったようです

平和なんだ…とか思いながら会話へ耳を傾けて。

そういうのあるんだ…………全部物騒な"ん"だな…

「……」「あ、さすがに無かったのね。んごろごろ以外…」

「誰かが答えるのを待っていればいいのに」

「平和が一番だネッ！」

　わざとらしく。

「オレの勝ちだ……
　罰は死だぜ」

「言葉だけなら幾らでも平和だものね」

「程よく波も引いて来て、物漁りには丁度いいかしら」

「くっ……」「負けは負け」
「受け入れるよ……」

「ごめん一気に平和じゃなくなったわ」

これは前言撤回が早い女。……と言うか"ん"が付いたら本来負けじゃ？

「こんな場所にしちゃ平和なほうだろー
　放り込まれてきたってのにみんな元気だねえ」

「受け入れちゃダメだろ、死を」

「受け入れるんだ……」

「えぇ…？希望の死に方はある…？」

「！そっか……」

歩く事すらままならない今は特に物盗りには気を付けないといけないだろう。
昨晩も隠していて難を逃れた鞄を持って、おろおろ、きょろきょろ。

「ないなら今作ればいいのでは？」
「“ん”から始まる言葉」

「臓器提供の意思は……？」

「よし……首を出しな……
　なるべく痛くねえように腹を殴ってやるからよ」

「………。

　鼠、増えた？」

「受け入れるコトあるンだ……」

潔さが売りなのかな。

「今言葉作ったって同じ国の人間が居なきゃ分かんないよな」

「せっかく刃物があるのに」

「首を出すのに」「腹なんだ」
大人しくか、観念してか頭を下げて、差し出しています。
こいつも大概正気じゃない

「首出させた意味は？」

「あら、前も居たでしょ。見えてなかっただけかしらね」

おろおろきょろきょろの白衣の傍に位置取りつつ……

「ネズミなんてこんな場所じゃ
　群れでいるモンだろ。何言ってんだ」

　リアル鼠の方

「そりゃ耳付なんざなんぼでもいるだろ」

「たしかに」
＊たしかに＊
＊鼠(動物)は丸焼きにして食べられることもあるほど＊
＊自分たちはねずみでもあるけれど＊
＊首縄は人だと言っているのだし＊

「……」

もしかして、新しいねずみを見かける度に名付けたりするのだろうか。
ぼんやり考えるだけで口を挟まないのは、たぶん体力温存かなにか。

「まあ死にそうになったら医者先生に診てもらえばいいさ」
そのほうが苦しまずに逝ける。

「オレこの子が心配なんだけど…」

潔過ぎるでしょ。

「オラッ！オラッ！！！！！！！」
腹を殴り始める。
容赦ないが殴りにくいのでそんなに強くない。

「なんだなんだ。耳持ちまでいんのか。
　こんなキモい見試しといてよく生き残れたもんだな同胞ー。
　運がいいねえ」

「あーあ……　素直に受けいれっからあんな目に遭うんだよ」

遠巻きに腹を殴られているのを眺めている。薄情すぎる。

今日は雨降るのかな。

ぽやーっと暗がりでぼんやり思っている。

骨牌を焼き、再びこの地へ戻ってきた。

「はあ……集めてきた金具を処理しなきゃ」

「こわ～い（裏声）」

「……！」

ああ、丁度良かった、と
片手で持つにはやや大きいか……？という程度の
鞄を隣の狼に押し付ける。隠す所を見られる可能性が高いまま
あれこれするより、これが一番安全では？

「サクッと死にたいならこの商品！
　一口飲めば割と天国に行けますよ〜」

　飴玉に似た包みを宣伝している。
　運が良ければ天国に、運が悪ければ地獄を見られる薬物だ。

子供もぽやーっと空を見上げています。

「ん、結構」「痛いかも」
防弾チョッキを着用しています。
生半可な暴力じゃ貫通できないぜ……

「ああ……できれば内臓を痛めない様な暴行を……」

「うーんバイオレンス。万一死んだら死体貰おっかナ」

心配は？

「だって、ここのねずみさんたちみんな名乗らないんだもん。」

なんともまぁ、な光景だ。ある意味此処じゃ珍しくもない部類だが。

「お、お…？」

なんて思っていれば押し付けられました。
え？は？なんて眼差しが鞄と白衣のとを行ったり来たり…

「お医者様、お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか～」

「まあ、運はいいか」

少なくとも見世物にも酒のあてにも今のところなっていないし。

「ねずみの子たちは知ってて群れてる訳じゃあないんだ？」

鉄軌蔓延る地下鉄にしても、偶然でひとところに集うのは少し珍しいかも。
……他に鼠の居所もないか。

「名乗るヤツァ多くねェしなあ」

この男も一向に名乗らないし。

「ああいうのもいる」

ねずみひとりひとりを普通のヒトみたいに扱おうとするやつ。

「名付けられずにふらふら生きてても
　珍しくないしなあ。
　"ネズミ"としか呼ばれないんだし、たいていは名前自体が
　必要ないのさ」

なんか感触薄いな……と思って、ゴスゴスと殴り続けながら防弾チョッキのない部分を探り始めた。し腹ではなく背中側を殴り始めた。ゴスッ！ガスッ！ガッ！！！！！

「ベレーだって自分の名前言ってくれないし。
　新しい子も名乗らないと、私はリボンって呼ぶことにするけど。」

「話すだけなら名前もそう必要は無いしね」

「………」

そのお医者さんが臓器どうこう言ってるしな……うーん、馴染んでる

「そもそもここにいる奴らの名前なんざ、誰も知らねえよ？」

「曙光に行ってきた」「此処とあまり変わらなかった」

「鼠は鼠、人は人でしょ〜。
　耳の形やら何やらが違うだけ、大して差なんてありますかねえ」

　ましてや名前なんて。

「あ、背中は卑怯」「だよ」
ズザッと素早く後退し、先程メンテナンスしてもらったピカピカのPM12を構えた。
弾は入ってない

「まあ、よく入れ替わるもんね、住人。
　落盤で死んだり、盗人に殺されたり。

　あ、改めて名乗るけど。
　私はヒノワだよ。」

「曙光」「そうなんだ」
＊人はそうそう変わらないのでしょうか＊

「刺すなら俺にしておけ」
「死人は死なん」

「銃か？
　撃てよ……
　撃てよおおおおおおおおおおお！！！！！！！」

迫ってくる……口を開きながら……

「確かに、話すだけなら名前は名乗らなくても良いよなぁ」
「…かといってあだ名付けられるのもな…」

「別に呼び方はなんだっていいぜ。
　明日会えるかもわからねー命だ。

　ただ、名前が必要な時にゃ"ナルベ"って名乗ってる。
　どっかの国のなんかの言葉だったらしい」

「可愛い可愛いねずみちゃん、かわいいかわいいねずみちゃん
　大丈夫だよ、人もひともネズミもねずみも一緒だよ
　なにひとつ変えられないまま終わりを迎えるんだ」

「ヒノワ、ね。宜しく～」

「ほんま、場所も種族も、感想が人それぞれで叶わんなあ。……皆同じこと言うん寄りは、ええかもな」
ため息交じり。どこかわざとらしく。そしてやはり表情は真顔のまま、変えない。変わらない。

「死にたがりにソレは逆効果でしょうね」

……見事な身のこなし。抜き打ちの速度。
その手合いか、と目を細めました。

「さあゴミを拾おう！ゴミを拾おう！
　素敵なゴミ拾いが僕達の愛だ！」

もう一度、手を添えて鞄を押し付け直す。

「預かってくれるか、
　どこか見つからない場所に隠しておいてもらえたらなって……」

それが上手くいかなくても、もし貴女が
対価として中身を少し頂いたりする事があっても、文句は言わない。

「鬼さんのことは鬼さん♡って呼んでね」

「ナルベだね、わかった。
　みんなも、改めてよろしくね。」

「今度は……貴石」「またあとで曙光にいかなきゃ」

忙しい……！

「……」「なんか、キモイからやだ」
銃を下ろしました。
ついでに距離を離しています。結構引いてるみたい

「名前覚えるんも苦手やわ。皆おなじ顔見えるし、なんも変わらん」

「虫のとこはそうだねぇ」
「楽しく過ごそうって人が多いから」
「明るくてきらきらしてるよ」

ちょっとくどいくらいには。

「実際、同じなのかも」「価値も、負荷も……やがては終わる」

「あわわわ……」

「あ、じゃあ私も……。アリサと申します。
　移植や再生や臓器提供に興味はある方はご相談を……」

指でチョキチョキ、ハサミの様なジェスチャー。

「オレが……キモいだと！？
　具体的に何処がキモいんだよ！教えてくれ……
　改善はしない、ただ怒りを燃やす……」
距離が離れた分追ってくる。ダッダッダッ……

「かちかち」
＊業だけが価値ではありますが＊
＊それすら終末までの話＊

「わぁ…ちょっとゴミ拾い行ってる間にえらい事になってる。いつもの事かもしれなくても、えらい事になってる」

「口開けて、せまってくるとこ」
キッパリ。
「まって」「そんなに追いかけてくるとは」
ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ(逃走のSE)
判断が早い。

「刃マンちゃんはすてきだよ」
無責任な褒め。

「ようわかっとるなあ。何しても、終わるんは同じ。変わらんものは変わらん」