「人間が畑で増えれば
　もう少し世の中は平和だったろうに……」

「あっ、こ、こんばんは」

「お、また知らん顔」

どーも、とひらひら手を振った。

「業だけで言やバッチリじゃネ？浪漫あるヮ〜」

あるのは浪漫ではなく倫理観の破綻です。

「ナワはいつものように煽ってるし、
　クタはブレずに漁ってる、と。」

　気分はさながらサブカル番組を見る少女。

「人間畑、ねぇ……」

「いらっしゃいにおつかれさま。
　塵芥は何処も歓迎よ」

「また新参者か……電車はもう焼き尽くされた筈だが、どこかに生きた線路があるのだろうか」

ひら〜っと手を振った。気さく。

「嫌いなんだよ」
「見てて嫌になる数字ってあるでしょ」

数字にこだわりがあるのかもしれない。

「……ふむ」
「こんばんは、今は何の話題なのかな？」
刀を携えた男がふらり。

ツギハギの外見に巨大な斧、作品が作品ならお前がポストアポカリプスの原因だろ、と言われそうな見た目

時折見る行商人めいた輩。
焼きに来ただけなのだろうし、一瞥して終わった。

「オレも後で酒買いに行こっト」

言いながら、その辺に落ちていた瓦礫を口に入れた。ヒョイパクー。

「やっぱ美味いもんじゃね〜ト食った気しね〜ナ……」

ゴリゴリ……。ぼり……。

「線路そのものがもう無い気はするけどね」

「そんなトコあれば教えてほしいもんだわ。
　金具取り放題じゃない」

「人間が増えるね～人間畑ホントに在るんじゃない？」

4枚の骨牌、特に使う事も無く持ったまま。
どこぞに移動する気も無ければ勝負を挑む利点もまだない。
こうしてなんにも使うことなく腐らせるのかもな。
その時は燃やして豪遊でもするか。世界はどうせ終わるらしいし。

「見てんじゃねぇぞ麦わら女」

「…人が多いとゴミが増える。
　助かるね」

ひらひら手を振って、挨拶代わり。

「色々使って歩き回ってるだけですけどね。
ほら、観光観光…贅沢しなきゃ損じゃないですか。」
「ここは何というか……やはり他と違いますね、空気感が。」

瓦礫。食べれるんだ。
雑草も喰えるねずみだけど、瓦礫は無理だ。

少し視線が向いた。

「電車なんて贅沢なものでしか通れないと思ってる？そんなものなくても歩いていけばいいんだよ。」
かく言うヒールも徒歩METLO通いである。

「じゃあー君はどんな数字がいいのー？」
気になったので聞いてみる。

「ゼロとか？」

「人間畑……？また見ない顔多くなったね」

子供は物陰で身体を休めている。
よく観察すれば肌の腫れ、軽度の負傷が見受けられるが、
普段の無機質な表情より、やや充足しているようにも見える。

｢ハハ、ここいらの街自体が人間畑かも知れねぇがな…
どーせ人の住めるとこなんざそうねぇし｣

「は？ 瓦礫……」

* 食ってんじゃん、と目を向けた。
* 食えんの？
* 美味しくはなさそう。それはそう。

「人間畑があればパーツ取りに困らないという話です」

そうだったかな～

「試しに血を焼いてみたが、業にならんな……」

瓦礫を喰らうようなヒトだっているさ。
なんせ此処は自由無秩序なメトロ。
色んなはみ出し物が選り取り見取りな交差点だろしな。

「デンジャってなに？デカイ金具？」

「其処のネズミ、ナワって言うんだ～
　ネズミも増えてきたから区別出来ないんだよね～ほらまた増えたし」

「じゃあナワのことガン見するね。」

　もしかしたらこいつも煽ってるのだろうか。
　人畜無害そうな表情で適当な瓦礫に座りながら、
　少女はぼうっと眺めています。

「クカカ、線路があったとて電車は動かね〜だロ。もう残ってね〜と思いますけどネ」

視線を向けられればにやりと笑んだ。
その辺の瓦礫を齧っている。雑食だなあ。

「がれき」
＊さすがに無機物は食べられません＊

「他所から来る奴ァ珍しいな」
「ゆっくりしてけよ」
何かしら毟り取られるまで。

「食う？美味くはない」

そりゃ美味くはないが、そもそも歯が欠ける方が先。

「瓦礫は流石に食べられないや。」

「ああ……業が……」
「業が……溜まっちまったよォーーーーーーーッ！！！！！！！！」
「どうしてこんなことになっちまったんだ……
　全部オレの行いが原因だって言うのか？そうだよ！オロロ～～～～ン」

「ゼロ」
「そうだね、ゼロが一番良い」
「1とか2とかはそんなに好きじゃない」

「俺ぁいい歳で顎弱いから遠慮しとく」
言いながら、何の肉かもしれないジャーキーを噛んでいる。

「人が増えても……まぁ、業くらいなら増えるかもしれないな。」
「奪う側、奪われる側両方が増えるか、奪われる側が増えるだけな気もするが。」

「なんか一人で唸ってる人がいる。

　おもしろ。」

「剣のは……あぁ……」

また増えたんだ。勝ったか、それとも燃やしたか。

「ご愁傷さまね」

そしらぬかお。たんたんと。

「カカッ。そりゃそーカ。
砕いて粉にしたら食えるカモよ？」

消化不全で死ぬだけだ。やめたほうが良い。

「俺の名前はナワじゃねぇ」
「んで見んじゃねぇ。目ん玉食われてぇのか」

ガン見に不機嫌な視線を返しておいた。にらみ合い。

「剣のやつはもっと業のない生き方を心がけろよせめて」

「今日は賑やかだな…」

騒がしいのに目を遣る。

「ボクもそろそろ仕事の時間かなぁ……もう一回くらい骨牌やりたい相克やりませんか～気分だけど……」
きょろきょろ。辺りを見回してみましょう！

「刃マンはまだ死ねてネ〜のカ……先に世界滅んじまうンじゃネ？」

「ゼロかぁ。」
終わりでもあり始まりでもある

「いいねー。かっこいいかも。」

「どこだ……？
　どこに唸ってるヤツがいるんだよ！？
　いねえじゃねえか！オレを騙しやがったのか！？！？！？
　ガルルルグルルルルグアアアアアアアッルルルルルアアアアアアア゛゛゛」

「業が貯まることに嘆く人もいるんだ、珍しい」

「ナニ？業が増えたら困るんならワタシにチョーダイよ？」

ほらよほらよと手を出してる。

｢お綺麗でいたいんじゃねえの？｣

「ふふっ、愉快な場所ね、此処。」

完全に見世物小屋扱い。
鼠やら、瓦礫食いやら。

とても生きの良いひとがいる……こわ……

「あれ、人がいる……」

ひょこっとその辺の物陰から顔を出す少女。

「"修理屋"もおつかれさま」
「これ位になるとやっぱ増えるわよね」

少し耳がぺたんと倒れた。

「死んだ時に天にでも行きたいのかい？業なんて名前だものなぁ。」

@LoadOld0
「骨牌なら、1個余ってますね……」

「やります？」

「目玉食べるならお魚の目玉のほうがいいよ。
　実は栄養あるから。」

　知らんけど。

「名前あるなら、教えてくれればそっちで呼ぶのに。」

「ゼロは一番何も考えなくて良い」
「だから好き」

「わぁ、すごい。すごい叫んでる。」

「こんばんはー。今日はここで寝過ごす観光客だよー。」
はじめましての人には挨拶を

「業無くありてえよォ……
　でも業が無ければ……殺して貰えないんじゃねぇかァ！？
　だからよォ……必要経費なんて合理化で己を慰めるしかねえんだよ！
　哀しい話だぜ……。ああ、殴った拳も痛えってのに。嘘だ。痛くねえ。」

「人と言って良いのかはわからんがな」
業を燃やして動くツギハギの死体

「成る程、成る程。」
考えるのってめんどくさいね、って思ったり。

「じゃーゼロ君って呼んでもいい？」

「業ってそんな大切なんだ」
「あんまり知らないや」

「……」

「……いたた」

脚を擦っている。いつ処置をしたのか、
女の足首は木片と包帯の様な布切れで固定されている。

@enlargeDesire
「お、素敵なおねーさん！いいよぉやろやろ！」
トランプを取り出して、ゲームを宣告しましょうね

「殺して上げるから業が欲しいな～
　今負けたばっかだから業無いし」

｢巣穴ともなりャ、人も鼠も集る か｣
｢さて、俺ぁそろそろ｣

小休憩も終わり。
そろっと膝を叩いて、この場を後にする。

ガリガリ。美味くもない瓦礫を齧りながら観戦。

うーん。やっぱ何か買ってこようかな。美味いもの。
歯がうずいてしゃーない。

「栄養なんざどうでもいい。
　俺は俺にとって不快な物を消せればそれでいい。」

今は麦わら女の目玉だ。
大きくて腹も膨れそうだし。

「呼ばせねぇよ。赤の他人に自分の事なんて一つも教えたくないね。」

名前もろくに知らない他人ばかりだ、ここは。

「業が大事かはともかく……ここではそれ業が全てだと聞く。」
「奪われたくないなら塵でも欠片でも集めた方がいい。」

@LoadOld0
「ふふっ、それじゃ、楽しみましょう。」

弄っていた塵の代わり、固まった骨牌を取り出した。

「ゼロ君？」
「……別に良いけど」

元々名前なんてない。
だからどう呼ばれたって構わない。

「業が……欲しいのか？」
「なら……こっちに来いよ……」
「オレの側までおいで……」
「チチチ、チチチチチチ(鳥の鳴き真似)」

「ま、何が大切かそうじゃないかは人それぞれでしょうね」

さてはて、今日は相克が良く起こる。
適当な場へと背をもたれるがまま、灰被りの獣は観察に徹するのだ。

難儀に狂った奴が居る。
今日も見せ物には困らない。
酒のアテの一つとして眺めている。

「うんうん。やっぱりゼロが似合う気がするー。ゼロ君、よろしくねー！」

「うちのことはーお風呂って呼んでー。お風呂！」
そう言って辺りを駆け回っている

「そりゃ業さえありゃ贅沢も出来ますからネ〜。
上の人間にとっちゃアもっと誠実だケド。俺等も電気まで奪われたくァねーしなァ」

インフラの停止は地下暮らしにとって死と同義ゆえ。

「業……みんないくつくらい持ってるんだろ」
「20000くらいかな……」

「大体5万が多いな」

威嚇する鼠、狂った死にたがり、そんなのを横目に骨牌で遊ぶ。

さてさて、結果は、と。

「あら、私の勝ちね。」

収穫は零だけど。

「あまり業はひけらかすモノではないとは思っていたけど……」

「そうだな、多いことを自慢しようとも、明日には全てむしられているだろう」

「灰に塗れてる奴は大体持ってるヤツでしょ、多分ね」

「5万…」「以外と、少なめかも」

「そうかもしれない。しかし無いよりはマシだろう」

「……なにそれ」

よろしく、とは返さなかった。
なんせ明日生きているかは分からないから。

「お風呂ね。何でお風呂？」

あまり人に付けるような名前でもない気がしたので。

「わ！手品？！」
固まった骨牌を見て分かりやすく驚きながら、ぱちぱちと骨牌を弄ります。

あ！負けた！やっべ！

「……(　‘ᾥ’　)‼️‼️」
カン！とヒールをひとつ鳴らして飛び上がります。毟り取られる業……

「覚えてろ～～！！」
あのうさぎ野郎、逃げた！！！

「おいおい、財布の中身なんざバラしちまって良いのかァ？悪い輩に毟られちまうゼ、クカカ」