「わたしはどうだろ」
「あるかもしれないし、ないかも」
その言い草は枯れてるのでは……？

「蜘蛛って美味いよナ……オレァ素揚げも好き〜」

勿論素焼きも美味い。

「枯れ木に例えるんは……ま、ええ趣味と思うわ。花咲く思うほうがええ趣味思うしな」

「年頃のは抱いてそうなもんだけどねぇ」

つんつんつこつこ……

「飽きる程経験したって人も居ればその逆も然り」
「なんにせよ、欲は人それぞれだこと」

「それだけ余裕があるってことでしょ、枯れてない人は。

　つまりそこから勝手にパクればいいんじゃない？」

「欲は溜まっても、発散は別に」
「しなくとも自然と波が引くからな」

「おう、食えるんなら何でも食うからまた頼むな」

今は服の上から覗く手足は本当に細いから、健康的な筋や肉は遠い道のりそうだ……。

「虫を……食べ……？」

青ざめている。表情が忙しい。

「あら、案外無欲な人の多い事。
食いしん坊な彼の方が、私は好きだわ。」

「カカッ、あの街で幸せじゃねーヤツァ貧乏人だけだろーナ。業がありゃハッピーになれンぜ？」
「ま、満腹になるにゃやっぱ遠かったケド。またグルメ探しに行こっかナ」

＊なんだかよく分からない話＊
＊相変わらず塵芥の山にばっかり向き合っています＊

「曙光、明るい場所だったよね、街の空気感だけ見てたら本当にそう、幸せそうだったんだ！びっくり！」

「その日生き延びる程度の食べ物があって、寝床があるならそれで良いかな」

「カロリー高いヤツも持ってきてやろうナ……」

言葉選びがお菓子の家の魔女過ぎる。

「オレァ欲全開ですけどネ！」

ただし食欲である。現金だなあ。

「切り落としたことないからなあ」
「たぶん生えてこないんじゃないかと思う…」
数量限定　先着三名！

「さぞかし賑やかやったんなあ曙光言うん。月も星も、明るさに恥ずかしゅうて隠れてまってそうや。うちも恥ずかしい思うからここに座っとくわ」

「そこまで枯れて生きるだけの肉にはなりたくねぇもんだ。
　明日は欲の街にでも行ってみるか。食べ残しがわんさか落ちてそうだ。」

でもあそこは眩しいし煩いんだよな…そこが難点だ。

「そーなンだ。貴重だナ。珍味的な？」

人の角を珍味呼ばわりしない！

ま、その日生きれればそれだけで御の字な人も多いしな。

「向こうはそりゃ、不夜城みたいなモンなんでしょうねぇ」

目が焼けちゃいそう。

「言葉にする無欲ほど信じられないものもないよ」
「いざとなったらすまし顔してられるとは思わないね」
「神父が神に信仰と貞操捧げながら父親の分からない子を量産してたの知ってるし」

「やっぱり賑やかなんだ……」

今向かえば、一瞬で誰か知っている者にあって御用になりそうだな、と思う
お尋ね者であった。

「友達とか親子とか」
「そういうのに無頓着な人も多いだろうね」

「オレ、興味あるんだよな曙光。
そんな頭ん中、お花畑な奴ばっかりなら、大事なもんの一つや二つ、盗られたって気づかなさそうじゃね？
……その為に業を得る機会が減るっていうのが難しい所なんだけどさあ？」

曙光。
足を運んだことはない。
ここよりは気の緩んだ奴がいたりするだろうか。

そう思っても、きっと決して、足を運ぶことはない。

「なんか役に立ちそうな物品とかと交換で売るか、角……」
限界までぼったくりたいところ。

安酒の瓶を逆さに持って深呼吸。
栓を抜いて呷るまでは虚脱感の滲む瞳だった。
殆どエタノールなものの、こんなもんを肌身離さず持ってる時点で。

「おあ～頭回って来た」

とか、野暮ったい事考えてちゃしょうがない。

「クカカ。無欲って主張するヤツよか、ギラついてて素直な方が分かりやすくて親切よナ？」

METROはそういう連中が多いもんで。

「食欲も、立派な欲ですもの。
私も食欲隠していないし……」

余ってたナッツらしきお菓子をポリポリしだした。

「欲が有るから、人は生きて行けると、私は思っています。
枯れてしまったら、後はこの世界みたいに干からびて死ぬだけです。」

「幸せそうな人を見る為なら確かにあそこに留まるのもアリだなぁってくらいだったし、久々に結構食べられたし…でも！やっぱりここで幸せを広めないとって思えたよ。あんな様子を見れば尚更ね！」

珍味なのかな。
食う奴みたことないからわかんないな。

「オレァ満腹になれンなら何でもい〜し、何でもい〜から否定もしね〜ョ。カカッ」

テキトー存在。考えなし。
あ、ナッツだ。いーなー。

「造花愛でる趣味もあらへんしな。ま、綺麗思ったり満足する言うなら幸せもんや。うちには分からんし佇んどったらええ。話さんで済むわ」

「曙光」
＊首縄の言う通り、きっとおこぼれにはあずかりやすいのでしょう＊
＊けれど他所へ出る勇気はありませんでした＊
＊ねずみは鼠の巣窟にいるのが落ち着くのです＊

「人に飼ったり飼われたりすんだろ、あっち。
住処にはしたくねえよ。きっしょいし」

偏見がひどい。ここにもあちらに住処を置く人もいるというのに。

「オレにも満腹っつー幸せ、届けてくんないかな、誰かガ」

無理がある。
ゴロゴロしたままその辺の塵芥を掻き集めては口に運んだ。瓦礫ごと。

「やっぱりあっちには」「人が多いんだね」

「満腹ね……」
「何食べても満腹になれないなら難しそうだけど」

「来る者を然程拒みませんよ、曙光は」
「寄りたけりゃ寄ってみりゃあいいし」
「物盗りもしたけりゃしてみるといいでしょう」

曙光は誰でもウェルカム。嫌いよか好きのが多い人種が散見されるし。

「アトラクション感覚で、とか言っても伝わらんのだろうけど」

「私がやりたいことは、
　向こうでは出来なさそうだからなあ。」

「可愛い獣耳の子とか、人気みたいですね」

飼うの。

並みいるねずみの中では、比較的行動的な方。
ひ弱でもなく、気弱でもない方。

「ま、適当に蓄えて帰ってくるか」

少なくともあそこで夜を明かす気にはならない。
ここよりずっと寒気のする視線で見られるから。

「角と交換できる“いいもの”を出せる人がいたら、交渉に応じてもいいよ」
角にあんまりこだわりがないんだろう。交換に出せるくらいは。

「そんな良いとこなんだなぁ…」

『……』
ライター求め曙光、梟首を歩いてきたが収穫無し。

此処で得た種子をパパっと焼いてしまって適当な場に背を預ける。
声を掛ければ持っている人間がいるやもしれぬが、いつも通り口を閉じたままだった。

「尊厳をテーブルの上に投げ載せたら一皿のパンを貰える素敵なとこだよ」

「それこそ掃除とか引く手数多な気がしそうねぇ」

なんでも食べれるなら。味の良し悪しがあるかはさておき。

「んー…ほんと、にぎやかだこと」

「曙光……あそこはなんと言えば良いのか」
「此処よりどこか"ぬるい"感覚がする」

「蓄えてっていうか、完全に盗んでくる流れだよねそれ。」

「私も、曙光は好きですよ。
欲に塗れてますからねえ。」

「鼠くんも行くなら、案内しましょうか？
ふふふっ…」

「行くなら、」
「……気をつけて」

これは同胞へ。

「中にはそういう人がいるってだけで皆が皆飼う趣味があるわけではないと思うけどね？食べ物にはありつけるよきっと。
でも、幸せっていざ届けるぞって時にはどうしたものかな…」

ﾁﾗｯ……

「他所から業を奪う、METROらしくて俺は好きだな」

「梟首の方は全然話題に出ないね」
「人気ないのかな」

「満腹になれる食いもんを探して食べ歩きしてンだけどネ〜。これが中々」
「曙光で清掃屋でもやろっかナ〜？？」

ゴミも何もかも喰えば処分出来るので。
石塊をガリガリ噛み砕きながらン〜、と思案げ。

「行くならいくらかこっちの人間が紛れ込むタイミングで生きたいけどな……」

スケープゴートに出来るだろうし、なんて。
姑息にも程がある思考。

「盗んでんじゃねぇ、貰ってやってんだ。」
「名前も書いてない、鍵もかけてない、大事に気にしてもない」
「それはいらないって事だろ。」

「他の場所に殺してやった方が良さそうなヤツがいたら教えてくれ。
　褒美に教えてくれたヤツを殺してやるからな……」

「これまで満腹になれなかったなら、いっそ人肉でも食べてみたら」
「ちょっとはお腹に溜まるかもよ」

適当ばっか言っている。無責任。

「梟首ァ堅っ苦しいかンなあ。オレァあれはあれで好きだけどネ」

ルールさえ守ってりゃ飢える心配もないので。

「梟首？一番ここの奴と相性悪いだろあんなところ」

と。物盗りが顔をしかめた。

「たねは、ここだとよくもえない。ばしょをかえたら、よくもえるかも。」

種子×2を焼却している。

「梟首、一番気になるとこ……！」
「規則正しいところ」「なんだっけ」

「誰に心配向けてんだ。
　俺はバレるようなヘマも、捕まるような下手も打たない」
「あと案内はいらねぇ。取って食われそうだし」

「はは、耳付がいいこと言った」

けたけた笑いながら拍手している。便乗。

「ェ〜？じゃあ肉分けてくれョ〜〜」

カラカラ笑った。ストレートだなあ。
無理に襲って喰おうとしないあたり、割合のんびりした男だ。

「少なくとも死んだ方が幸せかもしれない人は曙光でパッと見では見かけなかったかな。ごめんね」

「悪食を極めてる貴方が満足するのは難しそうですが…
私も、先程良い店紹介されてますし、瓦礫食い見せて貰ってるので、向こうの良い店有れば探しておきますか。」

いっぱい食べられる所。

「ベレーはママみたいな感じだよね。」

「そうかぁ……
　教えてくれてありがとう。その顔、覚えたぜ」

「梟首」「いや」
＊行ったこともありませんが＊
＊どうあがいても、合わない場所ですので＊

飼うだったり、首輪だったり。どんな欲であれ向こうは肯定するもんな。
チラチラ除く白衣の彼女を時折突いては、丁度いい暇潰しにでもしてるんだろうか。

「梟首ァ馴染めンなら一番安全かもナ。
彼処ァ党首がまあまあイカれだが、ルール守れるヤツにゃ優し〜し？
オレも行ったコトあっけどケンカは一回も売られなかったカナ〜」

「俺はあげれて左腕だけだから」
「満腹には遠いよ」

「梟のあそこはまぁ、惰性で生きてそうなのも居たわね」

「監視、管理されるのが当然って言うか。ま、此処の住人には合わないでしょ」

『……』
梟首、先迄居た場所。

態々種子を持ち帰りここで焼いたので、ただの観光目的に。
子達が平和な鬼ごっこで楽しんでいたな、と。

子達に視線向け喉を鳴らしていた。

「どういたしまし…顔を覚えたっていうのもニュアンス的にいわゆるターゲットロックオン的な、アレ？まぁ良いか。それで幸福度が上がるなら」

「お肉、合成かもだけどジャーキーならゲットして来たけど…」

「明確に敷いたルールに則って、少しでも先を目指すこと、
　目先の快楽に救いを求めること。
　そのいずれかにも夢や、希望は、あるのでしょうか……」

昨日はそれがないからここにいると告げたのだけど。
首を傾げる。ここで考えても仕方がないことでしょうか。

「そうだな……俺のような人でなしには合わなかった、どちらも」

「あっあっ」

突かれるままにゆらゆら揺れている……

酒を注ぐ手が、ピタリと止まる。
ちらと誰かの方を一瞬だけ見て。

けれどそれだけだ。どうでもいいとまた酒を飲みほした。

「やった〜。いー店頼んだゼ！
曙光じゃ瓦礫喰いも芸になるかねェ？前やった時ァまあまあおひねり貰えたしナ〜」

プライドとか無いんか？

「僕も一度は曙光に帰りたい気も、しなくもない」
「梟首に寄ろうもんなら指詰められる、どころか」
「首をチョンって切られてしまいそうですし」

でもなあ。スリリングな体験も人生ならではな気もする。

「鼠は警戒心が強いですね……
ふふっ、そういうのも、可愛らしくて良いですけど。」

本当に取って食う気かもしれないな。
この魔女は。

「梟のは大人しくしときゃ何も言われない。
　ここじゃ生きていけねぇ弱い奴がいく分にはいい。」
「まぁ……大人しくしてるだけで生きていけるほど
　技量がある奴なんか滅多にいないけどな。」

普通に働けるならこんな所に来やしないだろう

「瓦礫食いで一稼ぎはまぁ…特殊な人間じゃないとできないわな…」

「も　もしかして
　梟首会で路上オペしたらしょっ引かれますかあ？
　先生と旅行♡しようと思ったのに」

「梟首……もそのうち行ってみるかね」
ルールが厳しいのはきちんと守れるか怪しいけども。

「梟首もいずれ見に行ってみようかな。安定が約束された場所でのみ得られる幸福と、それを得る人がどんな様子なのか、勉強になるし！」

「ああ、そこの薄い色の髪の兄ちゃんは曙光の奴かあ。
ははなるほど、納得だ。なあ兄ちゃん、今は在庫余ってねえの？」

顔は覚えた、と言った。
一度餌付けするとこうだ。多分これから不定期的にたかられるだろうから、鬱陶しいなら早めに叩くといい。

「左腕だけでもまあまあ質量あんじゃんネ」
「ジャーキーは色んなヤツ試してっケド、まだ腹に貯まるヤツァ見つけられてネ〜んだよナ〜。
コロッケと交換しよ〜ゼ。出来立てで美味イ」

ただし謎肉。

「……」
〝不幸なことに〟、どうでもいいと思えど、顔は覚える。

「はあ。うちも大概やけど、影みたいな人が多くて息苦しゅうなるんもつまらんわ。夢持ちたいんなら持てばええ。誰にも盗まれんようにしとき。うちはそれ見とるだけやけどな」

「私は刻む時に情が湧いてしまうから動物も人も
　飼った事ないんですよね、一度も」

「俺はネズミじゃねぇ」

警戒の目に不機嫌な目が追加されるのであった。